2023年01月13日
2023年 第1週
(令和5年1月2日~令和5年1月8日)
【今週の注目疾患】
■E型肝炎
2022 年第 1 週から第 52 週までに県内医療機関から 43 例の E 型肝炎の届出があり、2021 年に引き続き、2003 年 11 月の感染症法改正により E 型肝炎が 4 類感染症に定められて以降、最多となった。
性別では、男性が 37 例(86%)、女性が 6 例(14%)であり、男性が多かった。
年代別では、男性では 40 代が 14 例(38%)と最も多く、次いで 50 代が 6 例(16%)であった。
女性では 50代が 4 例(67%)で最も多かった。患者が 24 例(56%)、無症状病原体保有者が 19 例(44%)であった。
推定される感染原因に記載があったものは 14 例であり、ジビエ 1 例、食肉(豚・牛・鳥・羊・焼肉・ユッケ)12 例、湧き水 1 例(湧き水と食肉重複 1 例あり)、生ガキ 1 例であった。
そのほか 29 例は不明であった。
推定される感染地域は、国内が 25 例(58%)、国外が 1 例(2%)、不明が 17 例(40%)であった。
日本赤十字社は E 型肝炎ウイルス(hepatitis E virus: HEV)輸血感染防止のため、2020 年 8月 5 日採血分から HEV-NAT による献血者の全数スクリーニングを開始した 1)。
県内発生届出において献血 HEV-NAT 陽性の記載があったものは、2020 年 4 例(17%)、2021 年 3 例(8%)、2022年 6 例(14%)の13 例であった。
13 例のうち、患者(肝機能異常)が 2 例(15%)、無症状病原体保有者が 11 例(85%)であった。
E 型肝炎は、HEV の感染によって引き起こされる急性肝炎である。
潜伏期間は 15~60 日と長い。
発熱、全身倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛等の症状を伴い、黄疸が認められるが、不顕性感染も多い。
従来は慢性化しないと考えられていたが、臓器移植患者など免疫抑制状態にある患者の HEV 感染が慢性的な感染を引き起こすことがある。
感染経路は、いわゆる途上国や衛生状況の悪い難民キャンプ等では患者の糞便中に排泄されたウイルスによる経口感染が主で、大規模な集団発生が報告されている。
一方、日本をはじめ世界各地で、E 型肝炎は人獣共通感染症として注目されている1)。
E 型肝炎の流行状況を調査するため、厚生労働省は「E 型肝炎発生時の検体の確保等について」を発出し、各自治体に患者検体の確保、もしくはウイルス解析情報の提出を依頼している2)。
E型肝炎は一般的に潜伏期間が長く、聞き取りによる感染源・感染経路の調査が困難である場合が多いため、事例発生時には糞便や原因と疑われる食品等の検体を確保し、分子疫学的手法を用いた解析を実施することで、集団発生の動向確認の一助とすることが可能である。
過去に国内においても病原体検査によって食品の摂食と E 型肝炎の発症との直接的な関係が確認された事例の報告がある3)。
HEV の感染経路は主に経口感染であり、ウイルスに汚染された食物、水の摂取により感染することが多い。
現時点で日本国内において認可されているワクチンはないため、予防には手洗い、飲食物の十分な加熱が重要となる。
また、E 型肝炎流行地域へ旅行する際は、清潔の保証がない飲料水(氷入り清涼飲料を含む)、貝類、果物、野菜をとらないように注意する必要がある3)。
食品衛生法に基づき、豚の肉や内臓を生食用として販売・提供することは禁止されている。
また、厚生労働省は、シカやイノシシなどの野生鳥獣の肉や内臓は生食せず、中心部まで加熱するよう呼び掛けている4)。
■インフルエンザ
2023 年第 1 週の県全体のインフルエンザ定点当たり報告数は前週(2022 年第 52 週)の 2.40(人)から増加し、4.73(人)であった。
保健所管内別では市原 10.00(人)、君津 7.50(人)、長生 7.43(人)が多かった。
2023 年第 1 週に報告のあった 946 例のうち、A 型 747 例(79%)、B 型 10 例(1%)、型非鑑別キットで陽性 109 例(12%)、検査未実施(検査実施未確認例含む)80 例(8%)であり、A 型が多かった。
■参考
1)国立感染症研究所:IASR Vol. 42 p271-272: 2021 年 12 月号
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2)2016(平成 28)年 8 月 16 日 健感発 0816 第 3 号 生食監発 0816 第 2 号
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3)厚生労働省:E 型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&A
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4)厚生労働省:豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年1月11日更新)