2022年05月13日

2022年 第 18 週(2022/5/2~2022/5/8)

【今週の注目疾患】
■侵襲性インフルエンザ菌感染症
 2022 年第 17 週、第 18 週に 1 例ずつ県内医療機関から侵襲性インフルエンザ菌感染症の報告があり、2022 年の累計は 2 例となった。
2 例ともに女性であり、年代は 60 代と 80 代であった。

 2013 年から 2022 年第 18 週までに、県内では 115 例の侵襲性インフルエンザ菌感染症の報告があった。
2019 年の 24 例をピークに減少傾向が続いている。
性別では、男性 68 例(59%)、女性 47 例(41%)で男性が多い。年代別では、最も多い年代は 80 代 33 例(29%)であり、次いで 70 代 25 例(22%)であった。
2019 年までは 0~4 歳の報告があったが、2020 年以降は報告されていない。
Hib ワクチンの接種歴は不明もしくは記載なしの者が 77 例(67%)で最も多く、次いで接種歴なしの者が 21 例(18%)、接種歴ありの者は 17 例(15%)であった。
接種歴ありの者は 0~9 歳の者が 16 例、70 代が 1 例であった。
接種回数については、4 回接種の記載ありが 10 例、3 回までの接種の記載はあるが 4 回目については接種なし、もしくは記載なしが 6例、1 回目以降の接種歴不明が 1 例であった。

 インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)はグラム陰性短桿菌で、乳幼児の多くは本菌を鼻咽頭に保菌する。
本菌感染症は、菌血症から全身に播種される侵襲性感染症と非侵襲性感染症がある。
侵襲性感染症は、血液や髄液等、本来無菌的な部位から細菌が分離された場合を指し、一般的に重症例が多い。
本菌は、莢膜株と型別不能株(non-typable H. influenzae:NTHi)に大別され、小児の侵襲性感染症の原因の主体は b 型の莢膜を有する H. influenzae type b(Hib)である1)。
Hib が起こす侵襲性疾患は多くの器官に及び、菌血症、髄膜炎、急性喉頭蓋炎などがある。
菌血症の多くは発熱を主症状とする潜在性菌血症として発症し、他の侵襲性感染症の前病態とされている。
Hib 菌血症は肺炎球菌による菌血症に比較して高率に髄膜炎などの合併や続発がみられる。
髄膜炎の多くは発熱で始まり、けいれん、意識障害へと進行し、短期間で死亡に至ることもある。
急性喉頭蓋炎は高熱、咽頭痛で発症し、急激に進行する気道閉塞により死亡することもある2)。

 一方、NTHi は小児および成人の非侵襲性感染症(中耳炎、慢性閉塞性肺疾患の憎悪など)の主要な原因菌である1)。
菌血症や髄膜炎などの侵襲性感染症の原因となることは稀であるが、Hibワクチンの普及により、Hib 感染症が激減した一方で、国内外とも相対的に侵襲性 NTHi 感染症が漸増してきている。
NTHi による菌血症は、乳幼児だけでなく成人、特に高齢者にも多いことが報告されている3)。
また b 型以外の莢膜株による侵襲性感染症も確認されていることから、莢膜型解析を含めた病原体サーベイランスが重要である1)。

 2013 年 4 月に Hib ワクチンが定期接種化されたことに伴い、侵襲性インフルエンザ菌感染症は、全数把握対象疾患(5 類感染症)に追加された1)。
 Hib ワクチンの標準的接種スケジュールは、生後 2~7 か月の乳児に 3 回接種し、その 1 年後に追加接種を行う2)。
本疾患の予防に効果的なのはワクチン接種による免疫保有であり、決められたスケジュールに沿って着実に接種を行うことが重要である。
また、本疾患の感染経路は飛沫感染または接触感染であることから、マスクの着用や手指衛生など基本的な感染対策が求められる。

■参考
1)国立感染症研究所:侵襲性インフルエンザ菌感染症
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:ヘモフィルスインフルエンザ菌 b 型(Hib)ワクチンQ&A
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:侵襲性 non-typable Haemophilus influenzae 感染症
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年5月11日更新)