2020年01月31日
今週の注目疾患 2020年 4週(2020/1/20~2020/1/26)
【今週の注目疾患】
【新型コロナウイルス感染症:第 3 報】
2019 年 12 月末に武漢市衛生健康委員会が発表した肺炎患者集積事例の発生において、中国当局は患者から検出されたウイルスが新型のコロナウイルス(暫定的に 2019-nCoV と呼ばれるように統一が見られている)と同定した。
この新型コロナウイルス感染例は中国本土のみならず、武漢市に渡航・滞在歴のある輸入症例が日本を含むアジア、北米、欧州やオーストラリアからも報告され、また中国への渡航歴のない患者の発生が、日本やドイツなどから報告されている。
各国・地域の公衆衛生当局からの発表によると、新型コロナウイルスに感染が確認された患者(確定例)は、中国本土では 1 月 28 日 24 時時点で5,974 例(うち死亡 132 例)となっている。
その他 17 の国・地域から患者の報告があり、香港 8 例、マカオ 7 例、台湾 8 例、日本 7 例、韓国 4 例、タイ 14 例、シンガポール 7 例、ベトナム 2 例、ネパール 1 例、マレーシア 7 例、アメリカ 5 例、オーストラリア 5 例、フランス 3 例、カナダ 2 例、ドイツ 4 例、スリランカ 1 例、カンボジア 1 例の報告がある。
新型コロナウイルスがヒト-ヒト感染により伝播することが確認され、家族内や医療従事者の感染例も報告されている。
World Health Organization(WHO)は、新型コロナウイルスのリスクを中国においては「特に高い」、周辺地域およびグローバルレベルでは共に「高い」としている。
国内においては 1 月 28 日、新型コロナウイルスによる感染症を感染症法に基づく「指定感染症」ならびに検疫法に基づく「検疫感染症」に指定することとし、2 月 7 日から施行される予定である。
・The Centre for Health Protection:Countries/areas with reported cases of novel coronavirusinfection
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【症例の特徴】
1 月 28 日 24 時の時点で中国本土では 5,974 例の患者確定例(うち 1,239 例が重症)が報告されている。また死亡は 132 例となっており、致命率は 2.2%と計算される。
患者は発生が最も多い武漢市を含む湖北省からおよそ 6 割となる 3,554 例(死亡 125 例)が報告されており、湖北省内に限れば致命率は 3.5%であるが、その他の中国本土から報告された 2,420 例では致命率は 0.3%となる。
湖北省以外で患者報告が増加しているが、軽症例の探知、遅れ報告の可能性や重症化までの経過時間等を考慮し、今後の患者転帰に注視が必要である。
患者年齢については、報告された患者の多くは成人~高齢者であるが、0 歳未満の報告も認め全年齢帯において感受性である。
基礎疾患を持つ高齢者において重症化の頻度が高いと考えられる。
死亡例について、年齢・性別や臨床経過等の情報が確認可能な湖北省の 39 例、北京市 1 例、上海市 1 例の計 41 例の属性は、男性 29 例(年齢中央値 70 歳、四分位範囲:65~81 歳)、女性 12 例(年齢中央値 70 歳、四分位範囲:66.75~80.5 歳)であった。
およそ 35%に高血圧、25%に糖尿病の既往歴があり、その他心疾患や呼吸器疾患を有する患者などとなっている。
【感染経路・感染源】
感染経路・感染源に関する情報については現在も多くが調査・検討中であるが、武漢市で事例発生初期の症例の多くは海鮮市場(武漢市華南海鮮城)に関連した事例と報告され、当該市場は、海鮮に加えてニワトリ、コウモリ、ネコ、げっ歯類や野生動物の販売があり、環境検体の検査で新型コロナウイルス陽性となった検体のおよそ 4 割が野生動物を扱う区画の環境検体であったとしており、初期には動物からヒトへの感染の可能性も示唆されるとしている。
一方で、直近の新規報告例はヒト-ヒト感染例と考えられる。
医療従事者の感染も報告され、医療従事者の感染予防、院内感染にも注意が必要である。
潜伏期間については、WHO は 2~10 日と推定しており、中国当局は約 10 日間(範囲 1~14日)と発表している。
また、中国当局は潜伏期間中の感染について示唆しており、加えて海鮮市場や明確な先行患者との接触歴が無い症例も報告されている。
市中における持続的なヒト-ヒト感染に影響を与える軽症・無症候患者からの感染や潜伏期間中の患者の感染性など、より詳細な情報と解析が必要である。
WHO は急性重症呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)といった過去のアウトブレイクでは、飛沫感染、接触感染(環境を介する場合を含む)によってヒト-ヒト感染の広がりを見せ、新型コロナウイルスも同様である可能性が高いとしている。
【病原体情報】
2020 年 1 月 12 日、中国当局は新型コロナウイルスの配列を WHO と共有した。
新型コロナウイルスの全ゲノム情報が遺伝子配列データベースである GenBank?や Global Initiative on Sharing All Influenza Data(GISAID)に登録されている。
国立感染症研究所は新型コロナウイルスの検出方法・結果についてホームページで公表し、その他、各国機関が検討した検出系が公表されている。
【公衆衛生対応】
ヒト-ヒト感染例の報告が続き、持続的なヒト-ヒト感染の可能性に注視する必要がある。
中国では武漢市と連絡する交通機関を停止し、他の地域においても交通機関の停止や催事の中止が報告されている。
国内では、検疫関係として空港等の検疫ブースにおけるポスターを用いた武漢市からの帰国者および入国者に対する自己申告を呼びかけるとともに、帰国者等に対する検疫(サーモグラフィー等を用いて、発熱等症状の有無の確認)を実施している。
また、厚生労働省から航空会社や船舶代理店に対して、機内・船内アナウンスの実施による中国からの帰国者及び入国者に対する自己申告の呼びかけ・健康カードの配布について協力依頼がなされた。
国立感染症研究所や国立国際医療センターにより、医療機関における対応と院内感染対策に関する情報、新型コロナウイルス関連肺炎患者の退院及び退院後の経過観察に関する方針(案)や新型コロナウイルス関連肺炎に対する積極的疫学的調査実施要領(暫定版)等の各種ガイドランが作成され公表されている。
検査については、全国の地方衛生研究所でも実施可能となるように体制の整備がなされているところである。
1月 28 日、今回の新型コロナウイルス感染症に関して、感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定され、公布された。
2 月 7 日から施行される予定であり、今後届出基準等の告示が想定され、引き続き新型コロナウイルス感染症の動向に注意をお願いいたします。
武漢市から帰国・入国された方でその後に咳や発熱等の症状を生じた場合には、マスクを着用し、医療機関に連絡を入れ、指示に従い速やかに医療機関を受診してください。
その際は滞在歴や行動歴などについて申告してください。
本事例においては、未だ感染源、感染経路、無症候・軽症例からの感染性といった多くの情報が調査中です。
症例の報告が直近において増加しており、日本を含む中国国外においても武漢市への渡航歴のある新型コロナウイルスによる肺炎例が確認され、また複数の国では渡航者との接触歴のある人から二次感染例の発生を認めたことから、今後、疫学情報や対応等について更新が想定されるため、引き続き注意をお願いいたします。
【参考・引用】
・厚生労働省:中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎の発生について
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・国立感染症研究所
新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報ページ
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和2(2020)年1月29日更新)