2021年09月03日
今週の注目疾患 2021年 34週(2021/8/23~2021/8/29)
【今週の注目疾患】
【百日咳】
2021 年第 34 週に安房保健所管内の医療機関から百日咳の届出(診断週は第 32 週)が 1 例あった。
70 代の男性で、感染経路は不明である。
県内では第 27 週にあった習志野保健所管内 1 例以来の報告であり、症例の集積は認められていない。
県内では、2018 年に 569 例、2019 年に 819 例報告されたが、2020 年は 83 例と著しく減少している。
2021 年も第 34 週までの報告数は 19 例であり、2020 年と同様に報告数は少なくなっている。
年代別では、2021 年は過去 3 年間と比較して、10 歳未満の患者が大きく減少し、相対的に 20 代、30 代の患者の割合が増加している。
百日咳は 2018 年 1 月 1 日から、それまでの小児科定点把握疾患から成人を含む検査診断例の全数把握疾患としての改正が施行された1)。
百日咳はグラム陰性桿菌である百日咳菌の感染によるが、一部はパラ百日咳菌も原因となる。
感染経路は、鼻咽頭や気道からの分泌物による飛沫感染及び接触感染である1)。
臨床症状は 3 期に分けられる。
通常 7~10 日間程度の潜伏期間を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の数が増えて程度も激しくなる(カタル期:約 2 週間持続)。
次第に短い咳が連続的に起こり、続いて、息を吸う時に笛の音のようなヒューという音がでる。
このような咳嗽発作を繰り返すことをレプリーゼと呼び、しばしば嘔吐を伴う。
発熱はないか、または微熱程度であり、顔面浮腫、点状出血、眼球結膜出血、鼻出血などがみられることもある(痙咳期:約 2~3 週間持続)。
激しい発作は次第に減衰し、2~3 週間で認められなくなるが、その後も時折発作性の咳がでる(回復期:2、3 週~)。
全経過約 2~3 か月で回復する1)。
百日咳は世界的に見られる疾患で、小児が中心となるが、いずれの年齢でもかかる。
乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後 6 か月以下では死に至る危険性も高い。
DPT 三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)あるいは DPT-IPV 四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)接種は日本を含め世界各国で実施されているが、ワクチン接種を受けていない世代や接種後年数が経過し、免疫が減衰した人(百日せきワクチンの免疫効果は 4~12 年で減弱する)の発病などは日本でも見られている。
成人の百日咳は咳が長期にわたって持続するが、典型的な発作性の咳嗽を示すことはなく、軽症であることから見逃されやすいが、菌の排出があるため、ワクチン未接種の新生児・乳児に対する感染源として注意が必要である1)。
国立感染症研究所の 2019 年サーベイランス報告では、6か月未満の患児の感染源の多くが兄弟や両親であったことから、これらの年齢層、特に学童期における百日せき含有ワクチンの追加接種の検討にも言及している2)。
■参考
1)国立感染症研究所:百日咳とは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:全数報告サーベイランスによる国内の百日咳報告患者の疫学 2019 年
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年9月1日更新)