2023年03月31日

2023年 第12週
(令和5年3月20日~令和5年3月26日)

【今週の注目疾患】
■梅毒
 2023 年第 12 週に梅毒の届出が 5 例あり、2023 年の累計報告数は 80 例となった。
梅毒は 2021年、2022 年と 2 年連続で年間累計報告数が 1999 年の現行感染症サーベイランス開始以降過去最多を更新した。
第 12 週における累計報告数 80 例は 2022 年第 12 週時点の累計報告数 62 例を約1.3 倍上回っており、増加傾向が継続している。

 2023 年第 1 週から第 12 週に届出のあった 80 例のうち、性別では、男性 61 例(76%)、女性19 例(24%)であった。
年代別では、男性は 30 代が最も多く 20 例(20/61,33%)、次いで 40 代が17例(17/61,28%)、50代が11例(11/61,18%)であった。
女性は20代が最も多く9例(9/19,47%)、次いで 30 代が 4 例(4/19,21%)、10 代が 3 例(3/19,16%)であった。
病型別では、男性では早期顕症梅毒第Ⅰ期(以下、第Ⅰ期)が最も多く 29 例(29/61,48%)、次いで早期顕症梅毒第Ⅱ期(以下、第Ⅱ期)が 19 例(19/61,31%)であった。
一方、女性では無症状病原体保有者が最も多く 8 例(8/19,42%)、次いで第Ⅱ期が 7 例(7/19,37%)であった。
2023 年は現時点で、先天梅毒の症例は報告されていない。

 梅毒の感染経路は菌を排出している感染者との性器や肛門、口腔などの粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為によるものである。
予防としては、感染者との性行為や疑似性行為を避けることが基本となる。
コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染がおこる可能性があるため、コンドームの使用は完全ではないものの予防効果があることが示唆されている 1,2)。
早期発見・早期治療が重要であり、再感染を予防するため、パートナーもともに検査を受けることが推奨される。
県では保健所において無料・匿名の検査を実施しているとともに、(公財)ちば県民保健予防財団への委託による検査を実施している。
感染が気になる方や不安なことがある場合には、活用されたい。
なお、最新の検査実施状況については、県ホームページ等でご確認いただきたい 3)。

 梅毒は、感染後 3~6 週間の潜伏期間を経て、継時的に様々な臨床症状が逐次出現する。

【第Ⅰ期】
感染約 3 週間後に梅毒トレポネーマの感染部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)に、しこりが形成されることがある。
無治療でも数週間で軽快する。感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められる。

【第Ⅱ期】
第Ⅰ期の症状消失後、4~10 週間の潜伏期間を経て、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹がでることがあるほか、脱毛、発熱・倦怠感の全身症状等多彩な症状を呈する。
無治療でも数週間で軽快するが、この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器に障害がおこることがある。

【潜伏梅毒】(無症状病原体保有者)
梅毒血清反応陽性で顕性症状が認められないものをさし、第Ⅰ期と第Ⅱ期の間、第Ⅱ期の症状消失後の状態を主にいう。
第Ⅱ期の症状が消失後、再度第Ⅱ期の症状を示すことがあり、これは感染成立後 1 年以内に起こることから、早期潜伏梅毒と呼ぶ。
これに対して、感染成立後 1 年以上たつ血清梅毒反応陽性で無症状の状態を後期潜伏梅毒と呼ぶ。

【晩期】
無治療で経過した者のうち、約 3 分の 1 で起こる。
ゴム腫、進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺に代表される神経梅毒に進展する。
場合によっては死に至る。

【先天梅毒】
梅毒に罹患している母体から胎盤を通じて胎児に伝播される多臓器感染症であり、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがある 1,2)。

■参考
1)国立感染症研究所:梅毒とは
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:梅毒に関する Q&A
>>詳細はこちら
3)千葉県:梅毒が増えています
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年3月29日更新)