2021年07月23日
今週の注目疾患 2021年 28週(2021/7/12~2021/7/18)
【今週の注目疾患】
【RSウイルス感染症】
2021 年 28 週に県内の定点医療機関から報告されたRSウイルス感染症の定点当たりの報告数(人)は前週の 6.73 からさらに増加し、8.60 となった。
本疾患のサーベイランス開始(2003年)以来、最も高い報告数である。
保健所管内別では柏市(20.56)、習志野(16.20)、船橋市(14.20)保健所管内で特に報告数が多くなっており、その他の地域においても、軒並み報告数が増加している。
全県的な流行が見られており、十分な注意が必要である。
本年、RSウイルス感染症は全国的にも流行しており、前週時点の全国における定点当たり報告数は 5.04 で、過去 10 年間において最も高い報告数を記録している 1)。
昨年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、RSウイルス感染症の発生はほとんど見られておらず、RSウイルスへ通常のレベルで曝露されていなかった可能性が考えられるため、特に重症化の可能性のある1歳未満の新生児・乳幼児や心臓・肺等の基礎疾患保有者、免疫不全者などは十分注意が必要である。
RSウイルス感染症はオルトニューモウイルス属に属するRNAウイルスのRSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)を病原体とする急性呼吸器感染症である。
感染経路は、飛沫感染と接触感染が主である。
RSウイルスの感染力や増殖力は比較的強いとされ、感染性のある期間は通常感染後 3~8 日程度とされているが、一部の乳児や免疫低下者等の場合には約4週間感染性が継続する場合もあるため、保育園・幼稚園・学校・病院・家庭内などでの集団感染につながりやすい。
飛沫感染対策として、マスクの着用、咳エチケット、こまめな室内換気の実施、十分な身体的距離の確保、接触感染対策として、手洗いや手指衛生の励行、むやみに顔、目、口などに触れない、高頻度接触物(おもちゃ等の共用物品、ドアノブ等)のアルコールによる消毒等の実施が有効である。
乳幼児の場合、マスク使用には注意が必要であり、身体的距離を確保するなどの感染予防策を自ら講じることは困難であるため、上記感染予防策の実施については、保護者や関係者等のサポートと配慮が不可欠である。
また、保育園等に通園していない乳幼児等の患者発生も見られているため、保護者自身が手洗いの励行等の感染対策を実施し、家庭内への持ち込みを防止するよう心がけることも重要である。
【レジオネラ症】
2021 年 28 週に県内医療機関からレジオネラ症が 5 例報告され、本年の累計報告数は 37 例となった。
報告のあった 5 例において、性別では男性が 3 例、女性が 2 例であり、年代別では 70 代が 2 例、40 代、60 代、80 代がそれぞれ 1 例ずつであり、60 代以上が 4 例(80%)と多い傾向がみられた。
保健所管内別では、松戸保健所管内が 3 例で最も多く、その他地域では市原、千葉市保健所管内で 1 例ずつ報告があった。
推定感染経路別では 5 例中 4 例(80%)が不明で、1 例が水系感染(詳細不明)とされていた。
いずれも現時点において散発的な事例と思われ、同一施設などから症例の集積は認められていない。
レジオネラ症は、土壌や水などの広く自然環境中に存在するレジオネラ属菌によって引き起こされる感染症で、エアロゾルを発生しうる人口環境(噴水・冷却塔・ジャグジー・加湿器等)や循環水を利用した入浴設備等で、衛生的な維持管理が不十分な場合、当該菌が増殖し感染源となる場合がある。
また、家庭内においても浴槽水、洗面所蛇口、残り湯の吸引ホース内等からレジオネラ属菌が検出されたという報告もあり、自宅においても注意が必要である。
2021 年 22 週の「今週の注目疾患」2)でも特集したとおり、例年夏~秋にかけて本疾患の報告数が増加する傾向がある。
レジオネラ症の発生予防のため、浴槽水は毎日換水する、浴槽内や洗面所、洗濯機の槽内等の水を使用する場所の十分な清掃、加湿器の定期的な洗浄や乾燥、こまめな水の交換等が重要である。
■引用・参考
1)IDWR速報データ第 27 週(国立感染症研究所)
>>詳細はこちら
2)2021 年 22 週週報
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年7月21日更新)