2023年12月08日
2023年 第48週
(令和5年11月27日~令和5年12月3日)
【今週の注目疾患】
■感染性胃腸炎
2023 年第 48 週に県内定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たり報告数は、前週(2023 年第 47 週)の 4.56(人)から増加し、5.74(人)となった。
今シーズン(第 36 週:2023年 9 月 4 日~)は過去 5 シーズンで最も高い定点当たり報告数が続いている。
保健所管内別では、千葉市 9.06(人)、印旛 8.81(人)、松戸 7.15(人)からの報告が多かった。
今シーズン、すでに県内でノロウイルスによる集団発生事例が確認されている 1)。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生しているが、特に冬季に流行するため 2)、今後の発生動向に注意が必要である。
乳幼児や高齢者等では、嘔吐、下痢によって脱水症状になることや、体力を消耗することがある。
特に高齢者では嘔吐物による誤嚥性肺炎を起こすこともあり注意を要する。
また、近年、サポウイルスやアデノウイルスによる集団発生事例も確認されている。
現在ノロウイルス・サポウイルス・アデノウイルス等による感染性胃腸炎に使用可能なワクチンはない。
また、消毒用エタノールのみでは十分な効果を期待できないことから、感染を予防するためには、食品類の十分な加熱、石けんと流水による手洗いの励行、嘔吐物・糞便等の迅速かつ適切な処理(使い捨てのガウン(エプロン)、マスクと手袋を着用する、飛散しないようペーパータオル等で静かにふき取る)及び次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約 200~1000ppm)等による汚染区域の消毒が重要となる。
手指に付着しているウイルスを減らす最も有効な方法は、石けんと流水による手洗いである。
調理や食事の提供を行う前、食事の前、トイレの後は必ず手洗いを行う。
また、手袋をしている場合であっても、嘔吐物・糞便等の処理やオムツ交換を行った後は必ず手洗いを行うことが重要である 2)。
■引用・参考
1)千葉県健康福祉部疾病対策課:【ノロウイルス】感染症予防のための情報提供について(令和 5年 10 月 30 日発表)
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2)厚生労働省:ノロウイルスに関する Q&A
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■咽頭結膜熱
2023 年第 48 週に県内の小児科定点医療機関から報告された咽頭結膜熱の定点当たり報告数は、3.96(人)であった。
過去 5 年間の同時期(第 48 週)と比較して定点当たり報告数が多く、発生動向に注意が必要である。
また、全国における発生状況についても、過去 5 年間の同時期と比較してかなり多いことが報告されている 1)。
咽頭結膜熱は、発熱、咽頭炎、眼症状を主とする急性ウイルス性感染症であり、アデノウイルス3型、4型、7型、11型などを原因とする。
また、アデノウイルスは、呼吸器疾患、流行性角結膜炎などの眼疾患、感染性胃腸炎などの消化器疾患、出血性膀胱炎、尿道炎などの泌尿器疾患や、肝炎なども起こす2)。
国立感染症研究所の報告によると、咽頭結膜熱は夏に流行のピークが認められ、2003年以降は冬にも明らかなピークがみられるようになった。
1歳を中心とする小児からの報告数が多い2)。
アデノウイルスは、接触感染及び飛沫感染するので、頻回の手指衛生対策等による感染対策が重要である。
家庭内での感染を防ぐために、こまめに手洗いを実施し、タオルなどは共用しないこと、ドアノブや手すり、おもちゃ等をこまめに次亜塩素酸ナトリウム等で清掃、消毒することが効果的である。
なお、通常の消毒用アルコールは十分な消毒効果を期待できないため、注意が必要である。
■参考・引用
1)厚生労働省・国立感染症研究所:IDWR 感染症週報 2023 年第 46 週
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2)国立感染症研究所:アデノウイルス感染症 2008~2020 年
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【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
2023 年第 48 週の県全体の定点当たり報告数は、前週の 2.04 人から増加し、2.30 人であった。
地域別では、君津(3.77)、印旛(3.75)、海匝(3.75)保健所管内で患者報告数が多かった。
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年12月6日更新)