2022年06月17日

2022年 第 23 週(2022/6/6~2022/6/12)

【今週の注目疾患】
■感染性胃腸炎
 2022 年第 23 週に県内定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たり報告数は、前週(2022 年第 22 週)の 5.36(人)から増加し、5.37(人)となった。
今週報告された計 687 例のうち、年齢群別では 1 歳が 121 例(18%)で最も多く、次いで 2 歳が 104 例(15%)、3 歳が 98例(14%)であった。
保健所管内別では、海匝 13.00(人)、船橋市 11.18(人)、印旛 7.13(人)からの報告が多かった。
 5 年間の同時期で比較すると、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった 2020 年、2021 年は低調であったが(2020 年第 23 週定点当たり報告数 1.09 人、2021 年第 23 週定点当たり報告数2.35人)、本年は新型コロナウイルス感染症流行前の2018年、2019年と同様に推移している(2018年第 23 週定点当たり報告数 5.54 人、2019 年第 23 週定点当たり報告数 6.21 人)。
感染性胃腸炎は多種多様な病原体の関与が想定され、一定の疫学パターンをとらないことが予想されるが、例年冬のピークの後、もう一つなだらかな山ができて初夏まで続き、年によってはもう一度小さなピークができた後、減少していくといわれている1)ことから、今後の発生動向を注視していく必要がある。

 感染性胃腸炎は、ウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を包含する症候群であり、多くのウイルス、細菌、寄生虫が原因病原体となり得る1)。
2022 年 4~5 月に探知された県内保育園における感染性胃腸炎の集団発生事例において、調査中のものを除き、原因病原体はノロウイルスまたはサポウイルスであった。
推定される感染経路は、保育所内での接触感染があげられていた。
 ノロウイルスもサポウイルスもカリシウイルス科に属する。
ともに、ヒト以外の動物に感染せず、培養細胞でも増やすことができない1)。
 ノロウイルス感染症とサポウイルス感染症の症状は同様であり、症状から区別することは困難である。
潜伏期間は 1~2 日間で、吐き気、嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱を伴うこともある。
ウイルスは症状が消失した後も、しばらく患者糞便中に排出されるため、二次感染に注意が必要である2)。
 ノロウイルス感染症の感染経路は、主に経口感染である。
ノロウイルスに汚染された食品を介した経路と患者の便や嘔吐物などから手指等を介してヒト-ヒト感染する経路が代表的なものとしてあげられる。
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがある3)。
現在ノロウイルスによる感染性胃腸炎に使用可能なワクチンはなく、感染を予防するためには、食品類の十分な加熱、石けんと流水による手洗いの励行、嘔吐物・糞便等の迅速かつ適切な処理(飛散しないようペーパータオル等で静かにふき取る、市販の凝固剤等を使用する等)および次亜塩素酸ナトリウム等による汚染区域の消毒が重要となる。
 手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法は石けんと流水による手洗いである。
調理や食事の提供を行う前、食事の前、トイレの後は必ず手洗いを行う。
また、手袋をしている場合であっても、嘔吐物・糞便等の処理やオムツ交換を行った後は必ず手洗いを行うことが重要である3)。
現在、新型コロナウイルス感染症の感染予防策として、消毒用エタノールによる手指消毒が推奨されているが、ノロウイルスは消毒用エタノールのみでは効果が期待できないことから、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはならないことに注意する必要がある。

 サポウイルス感染症の流行は乳幼児に多く認められる2)。
サポウイルス感染症も、糞口感染によるヒト-ヒト感染、あるいは汚染された食べ物や水による感染があると考えられている。
サポウイルスの予防にはノロウイルスと同様に、食品類の十分な加熱、患者の排泄物の適切な処理と手洗いの励行が重要である4)。

■RS ウイルス感染症
 RS ウイルス感染症の県内定点当たり報告数は、2022 年第 18 週から 6 週連続で増加した。
発生報告地域も拡大傾向にある。第 23 週に報告の多かった地域は、船橋市 1.09(人)、千葉市0.28(人)、松戸 0.27(人)保健所管内であった。
 昨年は、第 20 週頃(5 月下旬頃)から急激に患者報告数が増加し、本疾患のサーベイランス開始以降最多を記録した。
本年も、全国的に定点当たり報告数の増加傾向があり、今後の発生動向に注意を要する。

■参考
1)国立感染症研究所:感染性胃腸炎とは
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2)国立感染症研究所:胃腸炎関連カリシウイルス(ノロウイルス、サポウイルス)総論
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3)厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A
>>詳細はこちら
4)内閣府食品安全委員会:サポウイルスの概要
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年6月15日更新)