2022年07月01日

2022年 第 25 週(2022/6/20~2022/6/26)

【今週の注目疾患】
■細菌性赤痢
 2022年第25週に県内医療機関から細菌性赤痢が1例報告された。
原因病原菌はShigella sonneiであった。
海外渡航歴があり、推定される感染経路は魚介類の生食であった。
渡航歴がある症例の報告は 2019 年以来、3 年ぶりとなる。
 2012 年から 2022 年第 25 週までに県内医療機関から細菌性赤痢の報告が 56 例あった。
性別では女性 34 例(61%)、男性 22 例(39%)で女性が多い。
類型別では患者が 52 例(93%)、無症状病原体保有者が 4 例(7%)であった。
年代別では 20 代が 17 例(30%)と最も多く、次いで 30代が 14 例(25%)であり、20~30 代が半数以上を占めた。
 推定される感染地域は、国外が 36 例(64%)、国内が 19 例(34%)、不明が 1 例(2%)であり、半数以上が国外であった。
 推定される感染経路※は、経口感染(飲食物)が 33 例(59%)、接触感染(人)が 5 例(9%)、性的接触が 1 例(2%)、不明が 18 例(32%)であった。
感染原因と推定された飲食物は、国外での野菜や果物、魚介類などの生食、水、氷などがあげられていた。
接触感染では同居家族からの感染があげられていた。(※複数の推定感染経路が記載されている場合、重複計上している)

 細菌性赤痢の原因菌は赤痢菌(Shigella)である。
Shigella 属には 4 菌種(S. dysenteriae、S. flexneri、S. boydii、S. sonnei)が含まれる。患者や無症状病原体保有者の糞便、それらに汚染された手指、食品、水、ハエ、器物を介して直接あるいは間接的に感染する。
感染菌量は 10~100個と極めて少なく、家族内での二次感染も多い1)。
 通常、潜伏期は 1~3 日間であり、全身の倦怠感、悪寒を伴う急激な発熱、水様性下痢を呈する。
発熱は 1~2 日続き、腹痛、しぶり腹(テネスムス)、濃粘血便などの赤痢症状を呈する。
近年、重症例は少なく、数回の下痢や軽度の発熱で経過する事例が多い。
通常、S. dysenteriae や S.flexneri は典型的な症状を起こすことが多いが、S. sonnei の場合は軽度な下痢あるいは無症状に経過することが多い1)。
 予防の基本は、輸入例が半数以上を占めることから、細菌性赤痢の汚染が考えられる地域では非加熱食品、生の水、氷などを摂取しないことが重要である。
また、接触感染を予防するため、手洗いの励行が重要となる1)。

■手足口病
 2022 年第 25 週に県内定点医療機関から報告された手足口病の定点当たり報告数は、20 週から6 週連続で増加し、1.84(人)であった。
第 25 週に報告された患者について、年齢は 1 歳が最も多く(36%)、次いで 2 歳(34%)、3 歳(10%)であった。
発生報告が多かった地域は、柏市 5.22(人)、船橋市 3.82(人)、香取 3.33(人)保健所管内であった。
柏市保健所管内は警報開始の基準値である 5.0 をこえており、今後の発生動向に注意が必要である。

 手足口病は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症である。
コクサッキーA16(CA16)、コクサッキーA6(CA6)、エンテロウイルス 71(EV71)などのウイルスが原因ウイルスとなる。
基本的に予後良好な疾患であるが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀ではあるが急性脳炎を生ずることもあり、なかでも EV71 は中枢神経系合併症の発生率が他のウイルスよりも高いことが知られている2)。
 感染経路は主に飛沫感染で起こるが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがあり得る。
便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失した患者も2~4 週間にわたり感染源になり得る。
予防としては、接触予防策、飛沫予防策が重要である。
手洗いの励行は重要であり、特に排便後・排泄物の処理後の流水と石けんによる手洗いを徹底する2)。

■参考
1)国立感染症研究所:細菌性赤痢とは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:手足口病とは
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年6月29日更新)