2022年07月29日
2022年 第 29 週(2022/7/18~2022/7/24)
【今週の注目疾患】
■手足口病
2022 年第 29 週に県内定点医療機関から報告された手足口病の定点当たり報告数は、28 週の6.78(人)から横ばいで、6.77(人)であった。
依然として警報開始の基準値である 5.0(人)をこえており、大きな流行が継続している。
特に発生報告が多かった地域は、海匝 30.33(人)、柏市 10.56(人)、松戸 10.07(人)保健所管内であった。
8保健所管内(海匝、柏市、松戸、印旛、習志野、香取、船橋市、千葉市)で 5.0(人)をこえる大きな流行が発生しており、感染予防に十分留意する必要がある。
■梅毒
2022 年第 29 週に県内の医療機関より梅毒の報告が 5 例あり、2022 年の累積届出数は 160 例となった。
1999 年の現行感染症サーベイランス開始以降、最多を記録した昨年の同時期を 1.3 倍上回る届出数(2021 年第 29 週累積届出数 120例)であり、本年も増加傾向が続いている。
性別では男性 114 例(71%)、女性 46 例(29%)であり、男性が多い。
年齢別では、男性は 40代 44 例(44/114,39%)、50 代 26 例(26/114,23%)が多く、次いで 30 代 20 例(20/114,18%)であった。
女性では 20 代が 32 例(32/46,70%)で最も多く報告されていた。
病型別では、男性は早期顕症梅毒第Ⅰ期(以下、第Ⅰ期)が 73 例(73/114,64%)と最も多かったが、女性では早期顕症梅毒第Ⅱ期(以下、第Ⅱ期)が 22 例(22/46,48%)、無症状病原体保有者が 13 例(13/46,28%)と多く報告されていた。
2022 年は現時点で、先天梅毒の症例は報告されていないが 2 例の妊娠症例が報告されている。
推定される感染経路としては、男性では不明の 12 例を除く 102 例(102/114,89%)全てで性的接触があげられており※、うち 70 例(70/102,69%)が異性間性的接触であった。
女性では不明が 8 例、母子感染が 1 例のほか、37 例(37/46,80%)が性的接触であり、うち28 例(28/37,76%)が異性間性的接触であった。男女ともに異性間性的接触を推定感染経路とする症例が急増している。(※複数の感染経路が登録されている場合もあり)
梅毒は、梅毒トレポネーマを原因とする細菌感染症である。
主な感染経路は菌を排出している感染者との性器や肛門、口腔などの粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為によるものである。
予防としては、感染者との性行為や疑似性行為を避けることが基本となる。
コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染がおこる可能性があるため、コンドームの使用は完全ではないものの予防効果があることが示唆されている 1,2)。
早期発見・早期治療が重要である。
再感染を予防するため、パートナーもともに検査を受けることが推奨される。
県では保健所において無料・匿名の検査を実施しているとともに、ちば県民保健予防財団への委託による検査を実施している。
受検を希望する方は活用されたい。
なお、新型コロナウイルス感染症の流行状況に伴い変更される場合もあるので、最新の検査実施状況については、県ホームページ等でご確認いただきたい 3)。
梅毒は、感染後 3~6 週間の潜伏期間を経て、継時的に様々な臨床症状が逐次出現する。
【第Ⅰ期】
感染約 3 週間後に梅毒トレポネーマの感染部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等)に、しこりが形成されることがある。
無治療でも数週間で軽快する。
感染した可能性がある場合には、この時期に梅毒の検査が勧められる。
【第Ⅱ期】
第Ⅰ期の症状消失後、4~10 週間の潜伏期間を経て、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹がでることがあるほか、脱毛、発熱・倦怠感の全身症状等多彩な症状を呈する。
無治療でも数週間で軽快するが、この時期に適切な治療を受けられなかった場合、数年後に複数の臓器に障害がおこることがある。
【潜伏梅毒(無症状病原体保有者)】
梅毒血清反応陽性で顕性症状が認められないものをさし、第Ⅰ期と第Ⅱ期の間、第Ⅱ期の症状消失後の状態を主にいう。
第Ⅱ期の症状が消失後、再度第Ⅱ期の症状を示すことがあり、これは感染成立後 1 年以内に起こることから、早期潜伏梅毒と呼ぶ。
これに対して、感染成立後 1 年以上たつ血清梅毒反応陽性で無症状の状態を後期潜伏梅毒と呼ぶ。
【晩期顕症梅毒】
無治療で経過した者のうち、約 3 分の 1 で起こる。
ゴム腫、進行性の大動脈拡張を主体とする心血管梅毒、進行麻痺に代表される神経梅毒に進展する。
場合によっては死に至る。
【先天梅毒】
梅毒に罹患している母体から胎盤を通じて胎児に伝播される多臓器感染症であり、死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがある1,2)。
■参考
1)国立感染症研究所:梅毒とは
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:梅毒に関する Q&A
>>詳細はこちら
3)千葉県:梅毒が増えています
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年7月27日更新)