2020年12月04日

今週の注目疾患   2020年 48週(2020/11/23~2020/11/29)
【今週の注目疾患】

【侵襲性肺炎球菌感染症】
 2020年第48週に県内医療機関から3例の侵襲性肺炎球菌感染症の届出があり、2020年の累積は62例となった。
2013年に本疾患のサーベイランスが開始されて以降、近年は年間150例前後をベースラインとして推移していたが、2020年は昨年までと比較し届出が大きく減少している。
肺炎球菌はしばしば鼻咽頭に定着し、無症状の保菌状態となる。気道分泌物などの飛沫によりヒト-ヒト間を伝播し、肺炎の他、まれに侵襲性疾患として菌血症、敗血症や髄膜炎を引き起こす。
本年の届出の減少はマスク等の新型コロナウイルス感染症対策、受診行動の変化といった影響が推察される。
しかし、本疾患は冬~春に多くの発生を認め、また侵襲性とはならずとも、社会福祉施設等の集団生活の場における肺炎の集団感染や、他の呼吸器感染症(例えばインフルエンザ)に続発する肺炎としてもしばしば認められることなどから、特に好発年齢である小児や高齢者において注意が必要である。
一般的に、小児では肺炎を伴わず、発熱のみを初期症状とした感染巣のはっきりしない菌血症例が多く、成人では発熱、咳嗽、喀痰、息切れを初期症状とした菌血症を伴う肺炎が多い。
 2020 年に届け出られた 62 例について、年齢群は小児(15 歳未満)6 例(9.7%)、15~64 歳19 例(30.6%)、高齢者(65 歳以上)37 例(59.7%)であった。性別は男性 38 例(61.3%)、女性 24 例(38.7%)であり、成人~高齢者で男性例が多い。
 2014年10月から、高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンが定期接種(B類疾病)となった。
2020(令和2)年度(2020年4月1日から2021年3月31日まで)の対象者は、以下の1もしくは2に該当する方である。
 対象者1 2020(令和 2)年度に 65 歳以上となる以下の方
      65歳となる方  昭和30年4月2日生~昭和31年4月1日生
      70歳となる方  昭和25年4月2日生~昭和26年4月1日生
      75歳となる方  昭和20年4月2日生~昭和21年4月1日生
      80歳となる方  昭和15年4月2日生~昭和16年4月1日生
      85歳となる方  昭和10年4月2日生~昭和11年4月1日生
      90歳となる方  昭和 5年4月2日生~昭和 6年4月1日生
      95歳となる方  大正14年4月2日生~大正15年4月1日生
      100歳となる方  大正 9年4月2日生~大正10年4月1日生
 対象者2 60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方。
 ※いずれも、過去に23価肺炎球菌ワクチンの接種を受けたことがある方は対象外。

 症状は菌血症27例、肺炎を伴う菌血症26例、髄膜炎(菌血症を伴うものを含む)8例、その他1例であった。
小児(15歳未満)においては菌血症4例(66.7%)、肺炎を伴う菌血症1例(16.7%)、髄膜炎1例(16.7%)であった。
年齢群15~64歳においては菌血症10例(52.6%)、肺炎を伴う菌血症5例(26.3%)、髄膜炎4例(21.1%)であった。
高齢者(65歳以上)においては菌血症13例(35.1%)、肺炎を伴う菌血症20例(54.1%)、髄膜炎3例(8.1%)、その他1例(2.7%)であった。
注;《菌血症》菌血症の記載があったもの、もしくは血液から病原体検出例。《髄膜炎》髄膜炎の記載があったもの、もしくは髄液からの病原体検出例。


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和2(2020)年12月2日更新)