2020年09月11日

今週の注目疾患   2020年 36週(2020/8/31~2020/9/6)
【今週の注目疾患】

【腸管出血性大腸菌感染症】
 2020年第36週に、県内医療機関から6例の腸管出血性大腸菌感染症の届出があり、2020年の累計は66例となった。
県内では第25週以降、毎週複数例の届出が続いている。
食中毒事案も発生しており、細菌を「つけない(手指衛生、調理器具の使い分け)、増やさない(冷蔵・冷凍)、やっつける(十分な加熱、調理器具の消毒)」といった衛生対策が引き続き重要である。
 本感染症はわずか50個程度の菌数で感染が成立し、原因となる腸管出血性大腸菌に汚染された食品の喫食や、感染者の糞便汚染物との接触による糞口感染によって感染し、家庭内感染や二次感染が多いことも特徴である。
また汚染された食品が広域的に流通することにより、一見散発的に見えるアウトブレイクが発生しうることにも注意しなければならない。
 手洗いの励行といった基本的な衛生対策、食品の調理時における野菜類の十分な洗浄、肉類の十分な加熱や既知の感染リスクである生肉の喫食を避ける、調理器具類の洗浄、殺菌など交差汚染に対する注意が腸管出血性大腸菌感染症の感染予防に重要である。

【レプトスピラ症】
 レプトスピラ症は2006年以降、県内医療機関から7例の届出をみとめている。
レプトスピラ症の症状は急性熱性疾患で、3~14日の潜伏期間ののち、突然の悪寒、発熱で発症する。
感冒様の軽症型から、黄疸、出血、腎不全を伴う重症型(ワイル病)までその臨床症状は多彩である。
本症の感染経路は、原因となるレプトスピラ属菌の保菌動物の尿で汚染された環境での曝露、また動物の尿や血液への直接接触などがあげられ、野生動物を含め、ペットの犬など様々な動物が保菌動物となりうる。
 感染契機として河川等の淡水域での遊泳やレジャー活動や農作業の他、飲食店等の食品を取り扱う施設は保菌動物のネズミの誘因施設となるため注意が必要である。
海外の東南アジア等の流行地では台風や季節的な大雨による洪水の後に大規模なレプトスピラ症の発生がみられ、国内でも台風後の感染の報告がある。
実際に県内医療機関から届け出られた7例のうち、輸入例と推察される2例も含めて6例が8月(3例)もしくは9月(3例)の発病例である。
台風や大雨による洪水の後には不用意に水に入ることを避け、どうしても農作業(水路等の清掃等)や河川での作業が必要な場合は、ゴム手袋とゴム長靴を着用し、皮膚と感染源との物理的接触を最小限にすることが重要である。


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和2(2020)年9月9日更新)