今週の注目疾患  
2021年 42週(2021/10/18~2021/10/24)
【今週の注目疾患】

≪急性弛緩性麻痺≫
 2021 年 9 月 30 日に「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第 12 条第1項及び第 14 条第 2 項に基づく届出の基準等について」(平成 18 年 3月 8 日付け健感発第 0308001 号厚生労働省健康局結核感染症課長通知)の別紙「医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届け出る基準」が一部改正され、急性弛緩性麻痺の発生届様式が変更となった1)。
急性弛緩性麻痺(以下、AFP)の原因病原体は、ポリオウイルス、エンテロウイルス D68・A71 等の可能性があることを踏まえ、ポリオウイルス検査結果や検体の種類の記載欄が新設された。

 2018 年 5 月 1 日に AFP が 5 類感染症全数把握疾患に追加されて以降、2021 年第 42 週の時点で県内では 2018 年に 6 例、2019 年に 2例、2020 年に 1 例、計 9 例の報告があった。
15 歳未満小児人口 10 万人あたりの報告数に換算すると、2018 年 0.8 件、2019 年 0.3 件、2020 年 0.1 件であり、WHO が推奨する AFPサーベイランス感度指標(15 歳未満小児人口10 万人あたり年間 1 人2))をいずれも下回っていた。
 性別では女性 7 例(78%)、男性 2 例(22%)であった。年代別では、10 歳未満が 6 例(67%)、10~14 歳が 3 例(33%)であった。
 ポリオウイルス検査については、実施ありが 4 例(44%)、実施なしが 2 例(22%)、実施の有無不明が 3 例(33%)であった。ポリオウイルスが検出された例はなかった。

 WHO では昭和 63 年 5 月の世界保健総会における決議に基づき、ポリオ根絶に向けた取り組み(世界ポリオ根絶計画)を推進している。
ワクチン由来ポリオウイルス(VDPV)による AFP 症例はアフリカの広い範囲で発生しており、近年ではラオス、パプアニューギニア、フィリピン等でも VDPV によるアウトブレイクが発生している2)。
今回ポリオウイルス検査が実施されていた症例はわずか 44%であったが、今後、海外からの流入等に備え、国内においても速やかに病原体探索が行える体制の構築が不可欠である。
今回の様式改正により、ポリオウイルス検査実施の有無の把握や急性期の検体の確実な確保の推進が期待される。

 AFP は急性に四肢の弛緩性運動麻痺を呈する疾患(ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、横断筋髄炎、急性弛緩性脊髄炎(AFM)、エンテロウイルスによる急性脊髄炎など)の総称である。
AFP の病原体診断には、急性期の検体5点セット*が重要であり、事前準備と現場の連携が不可欠である3)。

*急性期の検体5点セット
急性期:麻痺発症後できるだけ早期、麻痺初発日が望ましい。
マイナス 70 度以下に凍結保管する。
①血液、②髄液、③呼吸器由来検体(必ず鼻咽頭由来検体を採取し、可能な限り下気道由来検体も採取する)、④便(発症後できるだけ速やかに、24 時間以上の間隔をあけて2回採取。
排便が認められない場合は、直腸ぬぐい液)、⑤尿

≪インフルエンザ≫
 2021 年第 42 週に松戸保健所管内、印旛保健所管内の小児科・インフルエンザ定点医療機関より計 3 例の報告があった。
2021/22 シーズンでは初めての報告である。
 年齢群別では 5~9 歳が 1 例(33.3%)、15~19 歳が 1 例(33.3%)、30~39 歳が 1 例(33.3%)であった。
小児科・インフルエンザ定点医療機関の協力による迅速診断結果については、3 例中 B型が 2 例(66.7%)、A 型が 1 例(33.3%)であった。
県全体の定点当たり報告数は 0.01 であり、流行の目安となる 1.0 を下回っている。
2020/21 シーズンの発生状況は非常に低調であったが、今後流行シーズンを迎えるにあたり、発生動向を注視していく必要がある。

■参考
1)千葉県:感染症届出基準・感染症届出様式
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:急性弛緩性麻痺
>>詳細はこちら
3)急性弛緩性麻痺を認める疾患のサーベイランス・診断・検査・治療に関する手引き
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年10月27日更新)