今週の注目疾患
2021年 43週(2021/10/25~2021/10/31)
【今週の注目疾患】

≪カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症≫
 2021 年第 43 週に県内の医療機関からカルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症(以下、CRE 感染症)が 6 例報告された。
性別では男性 5 例(83%)、女性 1 例(17%)であり、いずれも 65 歳以上の患者であった。
6 例のうち 2 例は院内感染による感染が推定されていた。

 CRE 感染症の 2021 年累計は 49 例となった。
2019 年、2020 年とほぼ同程度の報告数で推移している。
性別では男性 35 例(71%)、女性 14 例(29%)であり、年齢別では 65 歳以上の患者が 39 例と全体の 80%を占めていた。
症状別では尿路感染症が 20 例(41%)、肺炎が 8 例(16%)、菌血症が 6 例(12%)であった。
感染原因・経路(推定を含む)としては、「以前からの保菌」が 21 例(43%)と最も多く、次いで医療器具関連感染が 10 例(20%)、手術部位感染が3 例(6%)、院内感染が 3 例(6%)であった。
医療器具関連感染 10 例のうち 4 例(40%)が尿路カテーテル由来、3 例(30%)が人工呼吸器由来と推定された。
菌種別では K.aerogenes が 20 例(41%)と最も多く、次いで E.cloacae が 14 例(29%)、K.pneumoniae が 5 例(10%)であった。
また、2021 年に採取された CRE 感染症の検体で病原体サーベイランスに登録された 14 検体についてこれまでのところカルバペネマーゼ遺伝子(耐性遺伝子)を有する検体は確認されていない。

 CRE 感染症は、グラム陰性菌による感染症の治療において最も重要な抗菌薬であるメロペネムなどのカルバペネム系抗菌薬および広域β-ラクタム剤に対して耐性を示す腸内細菌科細菌による感染症の総称である。
CRE は主に感染防御機能の低下した患者や外科手術後の患者、抗菌薬を長期にわたって使用している患者などに感染症を起こす。
尿路感染症、肺炎などの呼吸器感染症、手術部位や皮膚・軟部組織の感染症、カテーテルなど医療器具関連血流感染症、敗血症、髄膜炎、その他多様な感染症を起こし、しばしば院内感染の原因となる。
無症状で腸管等に保菌されることも多い1)。

 CRE のなかでもカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼを産生する腸内細菌科細菌(CPE)はβ-ラクタム剤以外の抗菌薬に耐性を示す場合も多く、CPE による菌血症は、カルバペネマーゼ非産生 CRE によるものと比較して治療予後が悪いと報告されている。
また、CPE は多くの場合、カルバペネマーゼ遺伝子をプラスミド等の可動性遺伝因子上に保有するため、薬剤耐性を菌種をこえて伝播させることが知られている。
このため、CRE のうち CPE は院内感染対策上も治療上も区別が必要と考えられており、カルバペネマーゼ遺伝子検査の実施が必要とされている1)。

 厚生労働省は、CRE 感染症患者の発生届出が医療機関からあった際に、当該患者の検体の提出を求め、地方衛生研究所等でカルバペネマーゼ遺伝子(耐性遺伝子)等の試験検査を実施することとしている2)。
カルバペネマーゼにはいくつかの種類があり、国内で多くみられる IMP 型、海外で広がっている NDM 型、KPC 型、OXA-48 型が知られている。
海外型は多くの場合、カルバペネムのみならず他の抗菌薬にも耐性を示す多剤耐性型が多く、感染対策上特に注意を要する1)。
 なお、厚生労働省は、CRE 感染症は保菌者も含め 1 例目の発見をもってアウトブレイクに準じた厳重な感染対策を実施するよう求めている3)。

 各機関における感染拡大防止には、手指衛生、適切な個人防護具着脱等の標準予防策や接触予防策の徹底が重要となる。
また、発生を探知した場合には院内感染対策委員会又は感染制御チームによる会議を開催し、疫学的調査を開始するとともに、患者のすみやかな隔離、周辺の接触者や環境等へのスクリーニング検査の実施が重要となる3)。

■参考
1)国立感染症研究所疫学センター:カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症
>>詳細はこちら
2)カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)感染症等に係る試験検査の実施について(厚生労働省通知平成 29 年 3 月 28 日健感発 0328 第 4 号)
3)医療機関における院内感染対策について(厚生労働省通知平成 26 年 12 月 19 日医政地発 1219 第 1 号)

※2021 年第 42 週千葉県結核・感染症週報について
 【今週の注目疾患】≪急性弛緩性麻痺≫文中に「急性期検体 5 点セット」と記載しましたが、令和 3 年 9 月 30 日付け厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡により、現在の急性期検体は「1-便(24 時間以上の間隔をあけて 2 回採取)、2-呼吸器由来検体、3-血液、4-髄液」の 4 点と整理されております。
「急性弛緩性麻痺を認める疾患のサーベイランス・診断・検査・治療に関する手引き」についても国立感染症研究所において更新する予定であることから、同手引きが更新され次第、2021 年第 42 週週報を訂正する予定であることをお知らせします。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年11月4日更新)