2021年11月19日
今週の注目疾患
2021年 45週(2021/11/8~2021/11/14)
【今週の注目疾患】
≪感染性胃腸炎≫
2021 年 45 週の県内定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たり報告数は、前週 44週の 1.84(人)から増加し、2.27(人)となった。
3 週連続で報告数が増加しており、増加傾向が認められる。
発生報告が多かった上位 4 つの保健所管内は海匝(4.67)、船橋市(3.90)、松戸(3.25)、印旛(3.25)であり、県内 16 保健所のうち、11 の保健所で前週よりも発生報告数が増加していた。
県では、例年秋口から報告数が増加し、冬季にピークを迎えることが多い。
しかし、昨シーズン(2020/21 年シーズン)は、例年見られていた秋から冬にかけての報告数増加がみられず、全体的に低調に推移した。
今シーズン(2021/22 年シーズン)は昨シーズンと異なり、2017/18、2018/19、2019/20 シーズンと同様に増加傾向が確認されたため、今後の発生動向を注視していく必要がある。
感染性胃腸炎は、ウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を包含する症候群であり、多くのウイルス、細菌、寄生虫が原因病原体となり得る。
ウイルス性のものではノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがある。
細菌性のものでは腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなどがある。
寄生虫ではクリプトスポリジウム、アメーバなどがあげられる。
本疾患は多種多様な病原体の関与が想定されるため、一定の疫学パターンをとらないことが予想されるが、例年初冬から増加しはじめ、12 月頃に一度ピークを形成する。
これはウイルス性、特にノロウイルスの流行によるものと考えられる1)。
ノロウイルスの潜伏期間は 1~2 日であると考えられている。
嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱、倦怠感などを伴うこともある。
特別な治療を必要とせずに軽快するが、乳幼児や高齢者等は嘔吐、下痢などによる脱水や窒息に注意を要する。
ウイルスは症状が消失したあとも 3~7 日間は患者の糞便中に排出されるため、二次感染に注意が必要である2)。
ノロウイルスのヒトへの感染経路は主に経口感染である。
ノロウイルスに汚染された食品を介した経路と患者の便や嘔吐物などから手指等を介してヒト-ヒト感染する経路が代表的なものとしてあげられる。
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがある3)。
ノロウイルス食中毒は、食品取扱者が食品を汚染する場合のほか、汚染された二枚貝によるものもある。
調理をする際には手洗いの励行などの基本的な衛生管理のほか、調理器具は洗浄したあと、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)もしくは熱湯(85℃以上 1 分以上)で消毒することなどが有効である。
ノロウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が 85~90℃で 90 秒以上の加熱が望ましい3)。
手指を介したヒト-ヒト感染の予防は石けんと流水を用いた手洗いが有効である。
一般的な感染症対策として消毒用エタノールが用いられることがあるが、石けんと流水を用いた手洗いの代用とはならないため、注意が必要である3)。
また、患者の便や嘔吐物などの汚物には大量のウイルスが存在し、汚染された床等は感染源となり得る。
処理にあたる場合には、使い捨てのガウン、マスク、手袋を着用し、汚物中のウイルスが飛び散らないように、汚物をペーパータオル等で静かにふき取る。
ふき取ったあとは次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度 200ppm)で床を浸すようにふき取り、その後水拭きをする3)。
■参考
1)国立感染症研究所:感染性胃腸炎とは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:ノロウイルス感染症とは
>>詳細はこちら
3)厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年11月17日更新)