2021年10月15日
今週の注目疾患 2021年 40週(2021/10/4~2021/10/10)
【今週の注目疾患】
≪レジオネラ症≫
2021 年 9 月 1 日に市原保健所管内より本年 1 例目となるレジオネラ症死亡事例が発生した。
患者は 70 代男性で、感染経路は不明である。
2012 年から 2021 年第 40 週までのレジオネラ症患者累計報告数は 732 例となった。
性別では男性が 608 例(83%)、女性が 124 例(17%)であり、男性が多い。
年代別では、60 代が 216 例(29.5%)と最も多く、70 代が 184 例(25.1%)と続き、60 代以上が全体の 75%を占めた。
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、県内では一部の感染症に著しい減少が認められているが、
本症については散発的に患者発生が続いており、引き続き注意が必要である。
原因病原体は、土壌や水など自然環境にひろく存在するレジオネラ属菌である。
特に高齢者、新生児、大酒家、喫煙者、透析患者、移植患者や免疫機能低下者は、罹患すると肺炎を起こして重症化するリスクが高いとされている1)。
代表的な感染経路は、レジオネラ属菌に汚染された水や湯のエアロゾル(細かい霧やしぶき)を吸い込むことによる水系感染と土ぼこりなどを吸い込むことによる粉塵感染である2)、3)。
エアロゾルを発生しうるものとしては、冷却塔や気泡発生装置(ジャグジー)があるが、家庭における感染が疑われる事例もある。
洗車、野菜への水噴霧、土や腐葉土を使用する園芸作業などレジオネラ属菌を吸い込む可能性がある作業時にはマスクの着用が予防に有効である2)、3)。
また、加熱を伴わない加湿器(特に超音波式の加湿器)はタンクの水をつぎ足さず、毎日交換する、バイオフィルム(ぬめり)が発生しないようこまめに洗浄・消毒する、乾燥させる時間を作るなどの管理が重要である。
≪梅毒≫
2021 年第 40 週に県内の医療機関から梅毒の報告が 6 例あった。
累計報告数は 167 例となり、近年で最も多かった 2018 年の 164 例を超えて、過去 10 年間で最多となった。
性別では男性 109 例(65.3%)、女性 58 例(34.7%)であった。年代別では、男性は 20 代 28 例(26%)、40 代 26 例(24%)、30 代 25 例(23%)の年代で多かった。
女性は 20 代が 29 例(50%)と半数を占めており、30 代 9 例(16%)、40 代 7 例(12%)、10 代 5 例(9%)であった。
なお、2021年においては、これまでのところ先天梅毒の症例は報告されていないが、近年女性は特に 20 代の増加が顕著であり、先天梅毒の発生には十分注意する必要がある。
梅毒の病原体は螺旋状菌の梅毒トレポネーマである。
主な感染経路は粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為である。
梅毒は感染後 3~6 週間程度の潜伏期を経て、継時的に様々な臨床症状が逐次出現する。
症状が軽快する時期があり、治療開始の遅れにつながるため注意が必要である4)。
予防は菌を排出している感染者と性器や口腔、肛門を接触させる性行為や疑似性行為を避けることが基本である。
治療は早期に薬物治療を開始することが重要となる。
異変を感じた場合や心配なことがある場合には早めに検査を受け、早期発見・早期治療に繋げることが重要である。
県では、匿名で無料の検査を受けることができる5)。
また、梅毒は再感染をする可能性があるため、パートナーも共に検査をうけることが推奨される。
■参考
1)厚生労働省:レジオネラ症
>>詳細はこちら
2)千葉県:レジオネラ症とその予防対策
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所 感染症情報センターIASR:レジオネラ症
>>詳細はこちら
4)国立感染症研究所:梅毒とは
>>詳細はこちら
5)千葉県:梅毒の検査情報
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年10月13日更新)