2019年08月23日

今週の注目疾患   令和元年・第 33 週(2019/8/12~2019/8/18)

【輸入感染症(チクングニア熱・デング熱・レプトスピラ症)】
 2019年第33週に県内医療機関からチクングニア熱1例、デング熱1例、レプトスピラ症1例の届出があった。
潜伏期間を考慮すると、いずれも海外渡航先(推定感染地域:チクングニア熱(ミャンマー)、デング熱(カンボジア)、レプトスピラ症(ラオス))での感染と考えられる輸入例である。
海外からの帰国後は、しばらく自身の体調変化に十分留意し、何らかの症状が出現した場合は、必ず事前に医療機関に電話連絡で渡航歴や症状について伝え、医療機関の指示に従った受診が重要である。
チクングニア熱は、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカによって媒介されるチクングニアウイルスによる発疹性熱性疾患である。通常の接触によるヒト-ヒトの直接の感染はない。
アフリカ、米州、南アジア、東南アジア、インド洋や太平洋の島嶼国で発生が見られる。
潜伏期間は典型例では3~7日(範囲:1~12日)であり、突然の高熱出現と関節痛を特徴とする。
関節痛は通常両側対称性で、手首、足首や指趾などに出現し、数週間から数カ月にわたって続くことがある。発疹は通常発熱後に出現する。
その他の症状としては頭痛、倦怠感、悪心や結膜炎などがあり、重症例では脳炎といった神経症状、心筋炎、急性腎炎や劇症肝炎などの合併症が報告されている。
デング熱は、チクングニア熱同様ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカによって媒介される発疹性熱性疾患であり、熱帯・亜熱帯地域の多くで発生が認められている。
チクングニア熱よりも推計される無症候感染の割合は高い。
2019年に県内医療機関から届け出られたデング熱は累計17例となっており、昨年1年間の8例を既に上回っている。
輸入症例としてのデング熱の届出は、渡航先のデング熱の流行の程度や、渡航者数により影響を受けると推察されるが、2018~2019年に届け出られた25例の感染推定地域はカンボジア(5例)、インドネシア(4例)、フィリピン(3例)、タイ(3例)等となっている。
潜伏期間は典型的には3~7日であり、突然の高熱とともに発症する。
発熱のほか、頭痛、眼窩痛、筋肉痛、関節痛を伴うことが多く、発疹が発症後3~4日後に出現する。
発症者のおよそ5%が出血やショック症状を伴う重症型のデング出血熱となり、全身管理が必要になることもある。
不安や興奮状態となり、腹痛、嘔吐(24時間で3回以上)、鼻出血、吐血や血便といった重症化のサインは熱が下がって24~48時間後に現れることが多いとされている。
レプトスピラ症は、2006年以降に県内の医療機関から7例が届け出られており、2例は東南アジアへの渡航歴のある症例、5例は推定感染地域が県内の症例であった。
レプトスピラ症の感染経路として、原因となるレプトスピラ属菌の保菌動物の尿で汚染された環境での曝露、また動物の尿や血液への直接接触などがあげられ、野生動物含め、ペットの犬など様々な動物が保菌動物となりうる。
レプトスピラ症の症状は急性熱性疾患で、3~14日の潜伏期間ののち、突然の悪寒、発熱で発症する。
感冒様の軽症型から、黄疸、出血、腎不全を伴う重症型(ワイル病)までその臨床症状は多彩である。
感染契機として河川等の淡水域での遊泳やレジャー活動や農作業の他、飲食店等の食品を取り扱う施設は保菌動物のネズミの誘因施設となるため注意が必要である。
また、海外の東南アジア等の流行地では台風や季節的な大雨による洪水の後に大規模なレプトスピラ症の発生がみられ、国内でも台風後の感染の報告がある。
実際に県内医療機関から届け出られた7例のうち、輸入例と推察される2例も含めて6例が8月(3例)もしくは9月(3例)の発病であった。
台風や大雨による洪水の後には不用意に水に入ること避け、どうしても農作業(水路等の清掃等)や河川での作業が必要な場合は、ゴム手袋とゴム長靴を着用し、皮膚と感染源との物理的接触を最小限にすることが重要である。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和元年8月21日更新)