2022年06月10日
2022年 第 22 週(2022/5/30~2022/6/5)
【今週の注目疾患】
■咽頭結膜熱
2022 年第 22 週に県内定点医療機関から報告された咽頭結膜熱の定点当たり報告数は、定点当たり 0.22(人)であった。
新型コロナウイルス感染症流行前の 2018 年、2019 年は 21 週頃から増加傾向にあったことから、今後の発生動向を注視していく必要がある。
第 22 週に報告された患者について、年齢は 1 歳が最も多く(38%)、次いで 2 歳(24%)、6~11ヶ月(14%)、4 歳(14%)であった。
性別は男性が 55%、女性が 45%であった。
発生報告が多かった地域は、船橋市 1.09(人)、松戸 0.60(人)、柏市 0.44(人)保健所管内であった。
咽頭結膜熱は発熱、咽頭炎、眼症状を主とする小児の急性ウイルス性感染症であり、アデノウイルスによる。
アデノウイルスは現在 67 以上の型が報告されており、咽頭炎、扁桃炎、肺炎などの呼吸器疾患、咽頭結膜熱、流行性角結膜炎などの眼疾患、胃腸炎などの消化器疾患、出血性膀胱炎などの泌尿器疾患から、肝炎、膵炎から脳炎にいたるまで、多彩な臨床症状を引き起こす。
咽頭結膜熱の流行をおこすのは、多くは 3 型であるが、4 型、7 型、また 2 型、11 型など他の型による場合もみられる1)。
アデノウイルスは、季節特異性が少なく年間を通じて分離される。
しかし、疾患としての咽頭結膜熱は 6 月頃から徐々に増加をはじめ、7~8 月にピークを形成する1)。
多くのアデノウイルスは 5~7 日が潜伏期間とされている。咽頭結膜熱は発熱から始まり、頭痛、食欲不振、全身倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎にともなう結膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂を訴え、3~5 日間程度持続する。
眼症状は一般的に片方から始まり、その後他方にも出現する1)。
感染経路は、主に飛沫感染、手指を介した接触感染である。
本疾患は症状消失後も約 1 ヶ月間にわたって尿や便にウイルスが排出されると言われている。
感染しても症状のない無症状病原体保有者や明確な症状を示さない例も存在する2)。
予防としては感染者との密接な接触やタオルの共用などを避けること、流水と石けんによる手洗いやうがいを励行することなど基本的な感染症対策が重要である。
器具に対しては、煮沸、次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
消毒用エタノールの効果は弱いことが知られており、逆性石けん、イソプロパノールには抵抗性なので注意を要する1)。
■手足口病
2022 年第 22 週に県内定点医療機関から報告された手足口病の定点当たり報告数は、前週の定点当たり 0.16(人)から増加し、0.32(人)であった。
2019 年の県内流行時は 22 週頃から増加傾向にあったことから、今後の発生動向を注視していく必要がある。
第 22 週に報告された患者について、年齢は 1 歳が最も多く(43%)、次いで 2 歳(29%)、6~11ヶ月(17%)であった。
性別は男性が 45%、女性が 55%であった。発生報告が多かった地域は、柏市 1.11(人)、松戸 0.60(人)、市川 0.45(人)保健所管内であった。
手足口病は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス感染症である。
コクサッキーA16(CA16)、コクサッキーA6(CA6)、エンテロウイルス 71(EV71)などのウイルスが原因ウイルスとなる3)。
2019 年の県内流行の際には、県内病原体定点医療機関から提出された手足口病患者由来の検体からは CA6 が検出されている4)。
基本的に予後良好な疾患であるが、急性髄膜炎の合併が時に見られ、稀ではあるが急性脳炎を生ずることもあり、なかでも EV71 は中枢神経系合併症の発生率が他のウイルスよりも高いことが知られている3)。
感染経路は主に飛沫感染で起こるが、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などがあり得る。
便中へのウイルスの排泄は長期間にわたり、症状が消失した患者も2~4 週間にわたり感染源になり得る3)。
予防としては、接触予防策、飛沫予防策が重要である。
手洗いの励行は重要であり、特に排便後・排泄物の処理後の手洗いを徹底する3)。
■参考
1)国立感染症研究所:咽頭結膜熱とは
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:IDWR 2012 年第 25 号<注目すべき感染症>咽頭結膜熱
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:手足口病とは
>>詳細はこちら
4)千葉県:千葉県結核・感染症週報 2019 年 第 27 週
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年6月8日更新)