2022年11月25日
2022年 第 46 週(2022/11/14~2022/11/20)
【今週の注目疾患】
■感染性胃腸炎
2022 年第 46 週に県内定点医療機関から報告された感染性胃腸炎の定点当たり報告数は、前週(2022 年第 45 週)の 3.14(人)から増加し、3.76(人)となった。
今週報告された計 496 例のうち、年齢群別では 1 歳が 78 例(16%)で最も多く、次いで 2 歳が 77 例(16%)、3 歳が 66 例(13%)であった。
保健所管内別では、印旛 8.94(人)、松戸 5.73(人)、柏市 4.22(人)からの報告が多かった。
過去 5 年間のシーズンごとに定点当たり報告数を比較すると、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった 2020/21 シーズンは低調であったが、2021/22 シーズンは新型コロナウイルス感染症流行前の 2018/19 シーズンとほぼ同様に推移し、2022/23 シーズンも例年と同様に推移している。
また、今シーズンは保育園のサポウイルスによる感染性胃腸炎集団発生事例 1)など県内で複数の感染性胃腸炎集団発生事例が報告されている。
感染性胃腸炎は多種多様な病原体の関与が想定され、一定の疫学パターンをとらないことが予想されるが、例年ウイルス性、特にノロウイルスやサポウイルスによる流行が 12 月にピークを形成する 2)ことから今後の増加が見込まれる。
冬に向けて、発生動向を注視していく必要がある。
感染性胃腸炎は、ウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を包含する症候群であり、多くのウイルス、細菌、寄生虫等が原因病原体となり得る。
ウイルス性のものではノロウイルスやサポウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなどがある。
細菌性のものでは病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなどがある 2)。
ノロウイルスとサポウイルスはカリシウイルス科に属する。
ともに、ヒト以外の動物に感染せず、培養細胞でも増やすことができない 3)。
ノロウイルス感染症とサポウイルス感染症の症状は同様であり、症状から区別することは困難である。
潜伏期間は 1~2 日間で、吐き気、嘔吐、下痢が主症状であるが、腹痛、頭痛、発熱を伴うこともある。
ウイルスは症状が消失した後も、しばらく患者糞便中に排出されるため、二次感染に注意が必要である 4)。
ノロウイルス感染症の感染経路は、主に経口感染である。
ノロウイルスに汚染された食品を介した経路と患者の便や嘔吐物などから手指等を介してヒト-ヒト感染する経路が代表的なものとしてあげられる。
また、ノロウイルスは乾燥すると容易に空中に漂い、これが口に入って感染することがある 5)。
現在ノロウイルスによる感染性胃腸炎に使用可能なワクチンはなく、感染を予防するためには、食品類の十分な加熱、石けんと流水による手洗いの励行、嘔吐物・糞便等の迅速かつ適切な処理(飛散しないようペーパータオル等で静かにふき取る、市販の凝固剤等を使用する等)および次亜塩素酸ナトリウム等による汚染区域の消毒が重要となる。
手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法は石けんと流水による手洗いである。
調理や食事の提供を行う前、食事の前、トイレの後は必ず手洗いを行う。
また、手袋をしている場合であっても、嘔吐物・糞便等の処理やオムツ交換を行った後は必ず手洗いを行うことが重要である 5)。
現在、新型コロナウイルス感染症の感染予防策として、消毒用エタノールによる手指消毒が推奨されているが、ノロウイルスは消毒用エタノールのみでは効果が期待できないことから、石けんと流水を用いた手洗いの代用にはならないことに注意する必要がある。
サポウイルス感染症も、糞口感染によるヒト-ヒト感染、あるいは汚染された食べ物や水による感染があると考えられている。
サポウイルスの予防にはノロウイルスと同様に、食品類の十分な加熱、患者の排泄物の適切な処理と手洗いの励行が重要である 4)。
保育園や社会福祉施設などの集団で生活する施設内で、ノロウイルスやサポウイルスによる感染性胃腸炎が発生した場合には、集団感染となることがある。
各施設向けのマニュアルやガイドラインを参考に、感染対策に努められたい。
厚生労働省:保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)
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厚生労働省:高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019 年 3 月)
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■参考
1)千葉県:【サポウイルス】感染症予防のための情報提供について(令和 4 年 11 月 18 日発表)
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2)国立感染症研究所:感染性胃腸炎とは
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:胃腸炎関連カリシウイルス(ノロウイルス、サポウイルス)総論
>>詳細はこちら
4)内閣府食品安全委員会:サポウイルスの概要
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5)厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年11月24日更新)