2024年01月26日

2024年 第3週
(令和6年1月15日~令和6年1月21日)

【今週の注目疾患】
■劇症型溶血性レンサ球菌感染症
 2024年第3週に県内医療機関から劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxicshock syndrome: STSS)の届出が1例あり、2024年の累計届出数は9例となった。
本年の同疾患の累積届出数は、2014年以降の同時期(第3週時点)と比べて、最も多くなっている。
性別は男性7例(78%)、女性2例(22%)であり、年代別では70代及び80代が各3例(各33%)と最も多く、次いで30代、50代及び60代が各1例(各11%)であった。
血清群別ではA群が6例(67%)と最も多く、次いでG群が3例(33%)であった。
 また、昨年2023年は累計で44例の届出があり、2014年以降の過去10年間で最も多い届出数であった。
2023年に届出のあった44例のうち、性別は男性24例(55%)、女性20例(45%)であった。
年代別では70代が9例(20%)と最も多く、次いで60代及び80代が各7例(各16%)、40代、50代及び90代が各6例(各14%)であり、60代以上の高齢者が全体の66%を占めた。
推定された感染原因・感染経路のうち、最も多く記載があったのは創傷感染で20例(45%)であった。
届出時点における死亡の報告は44例中13例(死亡割合:30%)であり、13例中男性が6例、女性が7例で、年齢中央値は58歳(範囲35歳~94歳)であった。

 血清群別ではA群が20例(45%)で最も多く、次いでG群が14例(32%)、B群が6例(14%)、C群及び記載なしが各2例(各5%)と続いた。
近年、全体のうちG群の占める割合が上昇しており、A群が占める割合は2016年以降減少傾向にあったが、2022年と比較すると2023年はA群が占める割合が増加した。

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症はβ溶血を示すレンサ球菌を原因とし、突発的に発症して急激に進行する敗血症性ショック病態である1)。
化膿性疾患をおこす主要な溶血性レンサ球菌感染症の原因菌には、A群レンサ球菌(Streptococcus pyogenes :GAS)、B群レンサ球菌(S.agalactiae :GBS)とC、G群レンサ球菌(S. dysgalactiae subsp. equisimilis : SDSE)などが含まれる2)。
初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い1)。
その致命率は30%以上に及ぶとされる。
 主な原因菌であるA群溶血性レンサ球菌は、小児の上気道炎や化膿性皮膚感染症などの起炎菌として知られており、日常よくみられる症状として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂窩織炎、猩紅熱があるが、稀に菌血症の合併を伴いうる様々な侵襲性感染症(肺炎、髄膜炎、骨髄炎、化膿性関節炎、皮膚軟部組織感染症、壊死性筋膜炎)を引き起こすことがある3)。
 全国的にも劇症型溶血性レンサ球菌感染症の届出数が例年と比べ多い傾向にあること、A群溶血性レンサ球菌のうち猩紅熱や劇症型溶血性レンサ球菌感染症を含む侵襲性A群溶血性レンサ球菌感染症の増加への関与の可能性が報告されているM1UK株について2023年8月以降に関東地方において集積を認めたことから、厚生労働省は2024年1月17日付けで通知を発出し、劇症型溶血性レンサ球菌感染症患者の発生時には、地方衛生研究所で菌株の解析を行うか、必要に応じ国立感染症研究所等へ分離株を送付することについて依頼した4, 5)。
 医療機関の皆様におかれましては、保健所から検体分与の依頼があった場合にはご協力をお願いします。

■参考・引用
1)国立感染症研究所:劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは
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2)国立感染症研究所:溶血性レンサ球菌感染症 2006年4月~2011年
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3)国立感染症研究所:A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
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4)令和6年1月17日付け感感発0117第5号 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課長通知「劇症型溶血性レンサ球菌感染症の分離株の解析について(依頼)」
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5)国立感染症研究所:A群溶血性レンサ球菌による劇症型溶血性レンサ球菌感染症の50歳未満を中心とした報告数の増加について(2023年12月17日現在)
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【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
 2024 年第 3 週の県全体の定点当たり報告数は、前週の 11.41 人から増加し、16.03 人であった。
 地域別では、君津(30.31)、香取(22.17)、印旛(21.54)保健所管内で患者報告数が多かった。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和6(2024)年1月24日更新)