2021年06月11日

今週の注目疾患   2021年 22週(2021/5/31~2021/6/6)
【今週の注目疾患】

【レジオネラ症】
 2021年22週に県内医療機関からレジオネラ症が7例報告され、2021年の累計は24例となった。
レジオネラ症の発生は一年を通して認められるが、季節性があることが知られており、特に梅雨期の7月頃に患者発生のピークを迎える傾向があるとされる。
本県では、過去5年間において、例年20週頃から報告数が増え始め、秋季である40週過ぎまで流行が続く傾向が見られている。
 24例の届出の内訳は、肺炎型が22例(92%)、ポンティアック熱型が2例(8%)で大多数を肺炎型が占め、性別では男性が17例(71%)、女性が7例(29%)と男性で多く見られた。
年齢は中央値が81.5歳[範囲:41歳-100歳]で、年代別では80代が9例(38%)と最も多く、60歳以上の高齢者が約9割(88%)を占めていた。
保健所管内別では、千葉市・船橋市・柏市・君津保健所管内からの報告が多く、それぞれ4例ずつであった。
推定感染原因別では水系感染が6例(25%)で最も多く、銭湯、スポーツジムのジェットバス、デイケアの浴室等の利用歴がある者や自宅で使用した加湿器による感染や職業上の曝露が疑われる者もいた。

 レジオネラ症は、土壌や水などの自然環境中に存在するレジオネラ属菌によって引き起こされる。
エアロゾルを発生しうる人工環境(噴水・冷却塔・ジャグジー・加湿器等)や循環水を利用した入浴設備等で、衛生的な維持管理が不十分な場合、レジオネラ属菌が増殖し感染源となることがある。
レジオネラ症は劇症型のレジオネラ肺炎と一過性のポンティアック熱の 2 つの病型に分類される。
レジオネラ肺炎の潜伏期間は通常 2-10 日(16 日間の症例報告もある)、中枢神経症状や下痢などを認めることもあり、有効な抗菌薬による治療がなされないと特に致命的になる(免疫抑制下では 40~80%が死亡)。
一方ポンティアック熱は潜伏期間が数時間から 48 時間程度であり、インフルエンザ様症状が 2~5 日続くが、一過性で治癒する。
患者からの菌分離は、尿中抗原による診断が難しいレジオネラ属菌による症例の確認や、曝露源と推察される環境から分離された菌と合わせて遺伝子型別を行なうことによって、感染源の特定といった公衆衛生対応にも有用となる。
原因となるレジオネラ属菌は通常ヒトからヒトに直接感染することはないが、患者周囲に同じ感染源に曝露した者がいる可能性があり、注意が必要である。
前述の人工環境や入浴施設の利用による感染が疑われる場合には、環境検査やその曝露源周囲にポンティアック熱を含むレジオネラ症の症状を呈したものがいないか確認し、エアロゾルを発生しうる人工環境や入浴施設については、平時からの適切な維持管理がレジオネラ症予防に重要である。

■引用・参考
・WHO Legionellosis:
>>詳細はこちら
・国立感染症研究所_レジオネラ症とは:
>>詳細はこちら

【RS ウイルス感染症】
 2021年22週に県内の定点医療機関から報告されたRSウイルス感染症の定点当たりの報告数(人)は前週の0.39からさらに増加し、0.62となった。
3週連続で報告数が増加しており、同時期の発生状況では過去5年間で最も報告数が多くなっている。
地域によっては集団感染事例が発生している旨の報告もあり、感染防止のため、飛沫感染対策としてのマスク着用や咳エチケット、接触感染対策としての手洗いや手指衛生といった基本的な感染予防策を着実に講じることが重要である。


【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和3(2021)年6月9日更新)