2022年03月11日
今週の注目疾患
2022年 第 9 週(2022/2/28~2022/3/6)
【今週の注目疾患】
≪性感染症(STD)≫
2021 年は梅毒が、1999 年の現行感染症サーベイランス開始以降、最多の報告数となった。
本年は昨年をさらに上回るペースで増加傾向を示している1)。
定点把握性感染症(STD 定点)の 4 疾患(性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症)についても、2021 年の定点当たり報告数が 2012 年より増加していた。
特に、性器クラミジア感染症と淋菌感染症の男性の報告数増加が著しく、2018 年以降、性器クラミジア感染症は定点当たり報告数 0.62 から 3.26、淋菌感染症は 0.46 から 1.30 へと増加していた。
女性についても男性ほど急激な増加は認められていないものの 2012 年から 2021年にかけて微増傾向が続いている。
なお、女性の報告数が男性よりも少数であることについては、女性は自覚症状に乏しく受診の機会が少ないことも要因の一つと考えられ、自覚症状のない感染者はかなりいるものと推測されており、注意を要する2)、3)
2017 年から 2021 年までの過去 5 年間の性器クラミジア感染症と淋菌感染症の性別・年代別の発生状況について、性器クラミジア感染症計 7637 例のうち、男性が 4828 例(63%)であり、そのうち 20 代が 2033 例(42%)と最も多く、次いで 30 代が1314 例(27%)で多かった。
女性は 2809 例(37%)で、そのうち 20 代が 1707 例(61%)と最も多かった。
淋菌感染症では報告された計 2211 例のうち、男性が 1837 例(83%)で大部分を占めていた。
そのうち 20 代が 703例(38%)と最も多く、次いで 30 代が 505 例(28%)と多かった。
女性は 374 例(17%)で、そのうち 20 代が 207 例(55%)で最も多く、次いで 10 代が 78 例(21%)と続いていた。
2 疾患ともに 10 代~20 代の若年者の患者が多くなっており、国内では若年人口が減少してきていることから、これらの疾患の若年者における罹患率は高齢者に比べ、更に増加してきている可能性がある4)、5)。
■性器クラミジア感染症
病原体はクラミジア・トラコマチスである。
成人では性行為・疑似性行為により感染するが、新生児は母親からの産道感染である。
男性では尿道炎が最も多い。
排尿痛、尿道不快感、そう痒感などの自覚症状がでる。
淋菌尿道炎に比べて潜伏期間は長く、2~3 週間とされる。
女性では子宮頸管炎、骨盤内付属器炎、肝周囲炎、不妊などを起こすが自覚症状の乏しい場合が多い。
10 代の感染も見られることから、将来の不妊に繋がるとして憂慮される。
また、妊婦の感染は新生児のクラミジア産道感染の原因となり、新生児肺炎や結膜炎を起こす2)。
■淋菌感染症
病原体は淋菌である。
性行為・疑似性行為により感染する。
感染率は非常に高く、1 回の性行為により 30%程度に感染が成立すると考えられている6)。
咽頭や直腸感染例も近年増加している。
これらの症例でも無症状や症状に乏しい場合がほとんどであるが、感染源となる3)。
男性は主として淋菌性尿道炎を呈し、女性は子宮頸管炎を呈する。
男性は尿道に淋菌が感染すると 2~9 日の潜伏期を経て通常膿性の分泌物が出現し、排尿時に疼痛を生ずる。
しかし最近では、男性でも症状が典型的でなく、粘液性の分泌物であったり、場合によっては無症状に経過することも報告されている。
女性ではより症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、自覚症状に乏しいのが一般的である。
男性では精巣上体炎、女性では骨盤内炎症性疾患を生じ、不妊症の原因になり得る3)。
■予防
性的接触時にはコンドームを必ず使用する。
感染が疑われる場合には性行為等を避け、パートナーとともに医療機関を受診し、早期に治療を開始することが重要である2)、3)。
■参考
1)千葉県:結核・感染症週報 2022 年第 8 週
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:性器クラミジア感染症とは
>>詳細はこちら
3)国立感染症研究所:淋菌感染症とは
>>詳細はこちら
4)国立感染症研究所:性器クラミジア感染症の発生動向 2000 年-2020 年
>>詳細はこちら
5)国立感染症研究所:淋菌感染症の発生動向 2000 年-2020 年
>>詳細はこちら
6)国立感染症研究所:IASR Vol.29 No.9(No.343)September 2008
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年3月9日更新)