2023年02月17日

2023年 第6週
(令和5年2月6日~令和5年2月12日)

【今週の注目疾患】
■腸チフス
 2023 年第 6 週に県内医療機関から腸チフスの届出が 2 例あった。
患者は 2 例ともに海外への渡航歴があった。
 2013 年第 1 週から 2023 年第 6 週までに県内医療機関から届出のあった腸チフス症例は合計 23例であった。
23 例のうち、性別では男性が 12 例(52%)、女性が 11 例(48%)であった。
年代別では 10 歳未満から 80 代までの報告があり、20 代が 6 例(26%)で最も多く、次いで 40代が 5 例(22%)であった。
海外への渡航歴の有無別では渡航歴有りが 20 例(87%)と 8 割以上を占めていた。
推定される感染地域として南アジア地域が 12 例(52%)、東南・東アジア地域が 7 例(30%)挙げられていたほか、中東地域やアフリカ地域なども挙げられていた(※複数挙げられていた場合は、重複して計上)。

 国立感染症研究所の報告によると、2021 年 10 月から 2022 年 9 月の期間に国外からの輸入腸チフス症例が計 12 例報告されており、2021 年は年間で 3 例にとどまったが、2022 年は 9 月までの時点で 9 例報告されており、増加傾向が認められている 1)。
一部の国では広範囲に薬剤耐性を有する腸チフス症例の発生も報告されている 2)ため、今後の輸入症例の発生動向には注意する必要がある。

 腸チフスは腸内細菌科サルモネラ属に属するチフス菌による全身性感染症であり、一般のサルモネラ感染症とは区別される。
南アジア、東南アジアでの罹患率が高く、また中南米、アフリカでも発生がみられる。
日本における発生は散発的であり、その多くは流行地域への渡航者による輸入事例である 3)。
 臨床症状は通常、7~14 日間(報告によっては 3~60 日間)程度の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、全身倦怠感、高熱、徐脈、バラ疹、脾腫などの症状を呈する。
チフス菌は宿主特異性があり、感染源はヒトに限定されている。
ごく少量の菌数で感染することがあり、多くの場合、ヒトの糞便や尿で汚染された食物や水が当該疾患を媒介するため、衛生環境の改善が感染リスクの減少につながる。
ワクチンは国内で承認されたものは存在しないため、予防のためには、汚染されている可能性のある食べ物や水に注意し、十分に加熱された飲食物を摂取することや手洗いの励行等が重要となる 3,4)。

■インフルエンザ
 2023 年第 6 週の県全体のインフルエンザ定点当たり報告数は、前週(2023 年第 5 週)の 10.45(人)から減少して 9.50(人)となった。
 保健所管内別では松戸 19.78(人)、船橋市 15.00(人)、習志野 11.69(人)、印旛 10.96(人)が多く、定点当たり報告数 10.0(人)を上回り、県内の広い範囲で流行が継続している。
2023 年第 6 週に報告のあった 1995 例のうち、A 型 1678 例(84%)、B 型 16 例(1%)、型非鑑別キットで陽性 140 例(7%)、検査未実施(検査実施未確認例含む)161 例(8%)であり、A 型が多かった。
 2023 年第 5 週時点で全国の定点当たり報告数は 12.66(人)であり、第 4 週に引き続き注意報基準値を超えていた。
近隣都県の定点当たり報告数は、埼玉県 8.30(人)、東京都 9.81(人)、神奈川県 12.74(人)であった。
 引き続き、インフルエンザの予防対策を徹底していただきたい。

・基本的な感染対策
1 外出後の手洗い
2 適度な湿度の保持
3 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
4 人混みや繁華街への外出を控える
5 室内ではこまめに換気する
6 咳エチケット

千葉県:インフルエンザから身を守ろう
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■参考
1) 日本の輸入感染症例の動向について:国立感染症研究所
>>詳細はこちら
2) Extensively Drug-Resistant Typhoid Fever in Pakistan:CDC
>>詳細はこちら
3)腸チフス・パラチフスとは:国立感染症研究所
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4)お役立ち情報 腸チフス、パラチフス:FORTH
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【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年2月15日更新)