2020年01月17日

今週の注目疾患   2020年 第2週 (2020/1/6~2020/1/12)
【中国湖北省武漢市における新型コロナウイルスが検出された肺炎集積事例】
 2019 年 12 月 31 日、武漢市衛生健康委員会(Wuhan Municipal Health Commission)は、原因不明の肺炎 27 例(うち重症 7 例)の集積事例の発生を報告した。
症例の多くが海鮮市場 (武漢市華南海鮮城)と関連があるとされ、症例の症状は主に発熱であり、少数は呼吸困難 を呈し、胸部レントゲンでは両側に浸潤性の病変を示した。
患者は隔離治療を受けており、 疫学調査と予備的な検査の結果から症例はウイルス性肺炎と考えられ、これまでヒト-ヒト 感染が明らかな事例はなく、また医療従事者の感染もないとし、病原体の検出と感染原因の 調査を実施中と報告した。

本事例の調査や検査が実施される中、原因としてインフルエンザ、鳥インフルエンザ、ア デノウイルス感染症、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)といった既 知の呼吸器感染症が除外された。
中国当局は肺炎で入院した患者から分離されたウイルスが、 新型のコロナウイルス(各国によって異なるが 2019 novelcoronavirus、2019-nCoV、nCoV2019 や WN-CoV などと呼ばれている)であると同定し、本事例の原因をこの新型コロナウイ ルスによるものと暫定的に決定した。
1 月 14 日時点において、中国から 41 例(うち 7 例が 退院、6 例が重症、1 例が死亡)がこの新型コロナウイルスによる肺炎と診断されている。
患者発症日は 2019 年 12 月 8 日~2020 年 1 月 2 日の間であり、接触者合計 763 人(健康観察終 了 450 人、継続中 313 人)が報告されている。
・World Health Organization(WHO): Disease Outbreak News. Novel Coronavirus-China(2020
年 1 月 12 日)
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中国では 2020 年 1 月 3 日以降に新規の症例は確認されていないが、タイ保健省(Ministry of Public Health)が 1 月 13 日、中国からの輸入症例の発生を報告した。
症例は武漢在住の 61 歳の中国人女性で、1 月 5 日に発熱等の症状が出現し、8 日に直行航空便で武漢からタイ へ移動し、タイにおいて新型コロナウイルス(2019-nCoV)陽性が確認された事例である。
女性は武漢市の地域の生鮮市場へ定期的な訪問があることを報告したが、前述の武漢市華南海 鮮城への訪問については報告していない。
患者のより詳細な曝露歴については現在調査中と報告した。
厚生労働省は 1 月 16 日、神奈川県内の医療機関から 1 月 14 日に管轄保健所に対して武漢市の滞在歴がある肺炎の患者が報告され、国立感染症研究所で検査した結果、1 月 15 日に新型コロナウイルス陽性の結果が得られ、新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者 の発生が国内で確認されたことを発表した。
発症日は 1 月 3 日であり、申告では武漢市の海 鮮市場(華南海鮮城)には立ち寄っておらず、中国において、詳細不明の肺炎患者と濃厚接 触の可能性があるとしている。
・World Health Organization:Disease Outbreak News. Novel Coronavirus ? Thailand (exChina)(2020 年 1 月 14 日)
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・厚生労働省:新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(2020 年 1 月 16 日)
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【症例の特徴】
1 月 16 日時点で新型コロナウイルスによる症例は、中国、タイそして日本から報告されている。
タイおよび日本の症例は中国で感染したと考えられている。
患者発症日は前述のとおり、中国の 41 例は 2019 年 12 月 8 日~2020 年 1 月 2 日の間、タイの輸入例 1 例が 2020 年 1 月 5 日、日本の輸入例 1 例は 2020 年 1 月 3 日である。
中国における予備的な疫学調査において症例の多くは前述の海鮮市場の従事者、取扱者や常連者であると報告されており、武漢市 衛生健康委員会は症例の多くは中年~高齢の男性で、MERS と同様に基礎疾患を持つ高齢者において重症化の頻度が高いとしている。
死亡した 1 例は 61 歳男性の当該海鮮市場で常時商品 を購入する常連と報告されている。
腹部の腫瘍と慢性肝疾患の基礎疾患を有し、呼吸不全と 重度の肺炎で入院した事例であった。
ショックや多臓器不全と診断され、呼吸循環不全で死 亡したと報告されている。

【感染経路・感染源】
ヒト-ヒト感染を示す明確なエビデンスはなく、SARS や MERS で認める医療従事者の感染もこれまで報告されていない。
なお、中国で確認された症例 41 例の中には、家族クラスター が含まれることが判明している。
海鮮市場で働く男性が先に発症し、海鮮市場への曝露を否 定した妻の女性がその後発症した事例が認められている。
米国 CDC が 1 月 6 日に本事例を Watch-Level 1 として渡航者への注意喚起を発出した際、事例との関連が報告された海鮮市場では、海鮮に加えてニワトリ、コウモリ、ネコ、げっ歯類や野生動物が販売されており、当 該市場は清掃と消毒のため 1 月 1 日に閉鎖されたとしている。
感染経路や感染源は調査中で ある。
・Centers for Disease Control and Prevention:Travelers' Health Novel Coronavirus in China(1 月 14 日 改訂)
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【病原体情報】
2020 年 1 月 12 日、中国当局は新型コロナウイルスの配列を WHO と共有した。
新型コロナ ウイルスの全ゲノム情報が遺伝子配列データベースである GenBank?や Global Initiative on Sharing All Influenza Data(GISAID)に登録されている。
厚生労働省は中国からウイルスの遺伝子配列情報が公開されたことを踏まえ、国立感染症 研究所で検査方法を準備中としている。
・World Health Organization:Disease Outbreak News. Novel Coronavirus-China(2020 年 1 月12 日)
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・Centers for Disease Control and Prevention: Novel Coronavirus (2019-nCoV), Wuhan, China(2020 年 1 月 14 日改訂)
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・厚生労働省:中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明肺炎の発生について(第 4 報)(2020年 1 月 14 日)
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【公衆衛生対応】
現時点では本疾患は、家族間などの限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できな い事例が報告されているものの、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない。
風邪やインフルエンザが多い時期であることを踏まえて、咳エチケットや手洗い等、通常の感染対策を行なうことが重要である。
検疫所では、空港等の検疫ブースにおけるポスターを用いた武漢市からの帰国者および入国者に対する自己申告を呼びかけるとともに、帰国者等に対する検疫(サーモグラフィー等 を用いて、発熱等症状の有無の確認)を実施している。

武漢市から帰国・入国された方でその後に咳や発熱等の症状を生じた場合には、マスクを 着用するなどし、速やかに医療機関を受診していただき、その際には、武漢市の滞在歴があることを申告してください。
本事例においては、感染源、感染経路、感染力、無症候・軽症例の有無、ヒトーヒト感染 の有無などの多くの情報が調査中であること、また、日本においても武漢市への渡航歴のあ る新型コロナウイルスによる肺炎例が確認されたことから、今後、疫学情報や対応等について更新が想定されるため、引き続き注意をお願いいたします。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(2020年1月16日更新)