2020年06月12日
今週の注目疾患 2020年 23週(2020/6/1~2020/6/7)
【今週の注目疾患】
【腸管出血性大腸菌感染症】
2020年第23週に、県内医療機関から2例の腸管出血性大腸菌感染症の届出があり、2020年の累計は21例となった。
夏季は腸管出血性大腸菌感染症の発生が多く、汚染食品からの感染に加えて糞口感染によるヒトからヒトへの二次感染にも注意が必要である。
千葉県は6月1日から9月30日を期間として食中毒注意報を発令した。
腸管出血性大腸菌のほかカンピロバクターや黄色ブドウ球菌といった細菌による食中毒発生のリスク低減のためには、細菌を「つけない(手指衛生、調理器具の使い分け)、増やさない(冷蔵・冷凍)、やっつける(十分な加熱、調理器具の消毒)」ことが重要である。
腸管出血性大腸菌感染症の症状は多様であり、無症状の場合もあれば、時に溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome, HUS)を続発して致命的となるなど様々な病態をとりうる。
典型例では3~5 日の潜伏期をおいて、激しい腹痛をともなう頻回の水様便の後に血便がでる。
また37~38℃台の熱や嘔吐を伴うこともある。
HUS、または脳症などの重症な合併症を発生することがあり、HUS を発症した患者の致命率は1~5%とされている。
第23週までに届け出られた21例のO血清型・VT産生型の内訳は、
・O157・VT2(4例)、O157・VT1VT2(3例)、O157・VT不明(1例)
・O26・VT1(4例)
・O111・VT1(2例)
・O不明・VT1(4例)、O不明・VT2(1例)、O不明・VT1VT2(2例)
となっている。
腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素(VT)の違いによって、重症度に違いが見られ、VT2 産生株(VT1VT2 もしくはVT2)は、VT1 単独産生株と比較し、患者(有症者)として届け出られる割合や血便を呈する患者の割合も高い。
一方でVT1 単独産生株においても、無症状や軽症といったことを背景に症例が探知されずに二次感染が発生し、施設内や集団内で感染が拡大してしまうといったリスクがあり、特に保育園や幼稚園といった施設における集団発生の報告が多い。
腸管出血性大腸菌は少数の菌数で感染が成立するため、手洗いの励行といった基本的な衛生対策、食品の調理時における野菜類の十分な洗浄、肉類の十分な加熱や既知の感染リスクである生肉の喫食を避ける、調理器具類の洗浄、殺菌など交差汚染に対する注意が腸管出血性大腸菌感染症の感染予防に重要である。
《お知らせ》
新型コロナウイルス感染症の感染者の発生状況や検査状況については、千葉県庁ホームページを参照ください。
○患者の発生について|新型コロナウイルス感染症
>>詳細はこちら
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和2(2020)年6月10日更新)