2023年12月01日

2023年 第47週
(令和5年11月20日~令和5年11月26日)

【今週の注目疾患】
■腸管出血性大腸菌感染症
 2023 年第 47 週に県内医療機関から 8 例の腸管出血性大腸菌感染症の届出があり、本年の累計は 135 例となった。
例年、小児から高齢者まで幅広い年齢層の報告がある。
また、2023 年は第 47 週までに、3 例の溶血性尿毒症症候群(HUS)が報告された。

 腸管出血性大腸菌感染症の原因菌はベロ毒素(VT)を産生する大腸菌である。
腸管出血性大腸菌は家畜等の腸管内に生息しており、感染経路は糞便に汚染された食品や手指などを介した経口感染である。
少ない菌数(50個程度)で感染が成立するため感染が拡大しやすい。
 症状は無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々である。
多くの場合、3~5日間の潜伏期を経て、激しい腹痛を伴う頻回の水様便の後に血便となる。
発熱は軽度で37℃台である。
血便の初期には血液の混入は少量であるが、次第に増加し、典型例では便成分の少ない血液そのものという状態になる。
有症者の6~7%において、下痢などの初発症状発現の数日から2週間以内にHUSまたは脳症などの重篤な合併症が発生する。
HUSを発症した患者の致死率は1~5%とされている1)。
 予防の方法として、食品を介した経口感染(食べ物から人への感染)に対しては、食肉類は中心部までよく加熱する(中心部が75℃1分間以上の加熱)、生肉を触った後の手指、調理器具はよく洗浄して消毒する、まな板等の調理器具は用途別に使い分ける、生肉を取り分ける箸(トング)と焼きあがった肉を取り分けたり食べたりする箸(トング)を使い分ける、加熱せずに食べる野菜や果物は十分に洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌することが重要である2)。
 手指を介した経口感染(人から人への感染)に対しては、手洗いが最も重要である。
排便後や食事前はもちろんのこと、特に下痢をしている乳幼児や高齢者の世話をする際には、使い捨て手袋を用い、作業後には石けんと流水でよく手を洗う。
少量の菌数で感染が成立するので、乳幼児や高齢者が集団生活を行う場合や家庭内などでは二次感染の防止が重要である3)。

■引用・参考
1)国立感染症研究所:腸管出血性大腸菌感染症とは
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2)千葉県:腸管出血性大腸菌について
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3)厚生労働省:一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)
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■インフルエンザ
 2023 年第 47 週の県全体のインフルエンザの定点当たり報告数は、前週の 21.84(人)から増加して 26.81(人)となった。
例年より早期に患者報告数の増加が見られているため、今後の発生動向に注意が必要である。
年齢群別では、2023 年第 47 週に報告のあった計 5,415 例のうち、10歳未満が 2,375 例(43.86%)と最も多く、次いで 10 代 1,633 例(30.16%)、40 代 402 例(7.42%)であり、20 歳未満で患者報告数全体の 74.02%を占めた。
 地域別では、君津(38.23)、習志野(35.67)、市原(35.27)、印旛(34.92)、海匝(32.50)、松戸(32.32)、船橋市(30.18)保健所管内で国の警報レベル(開始基準値:定点当たり 30.0 人)を超える水準となっている。
 インフルエンザ予防のため、こまめな手洗い、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取、室内でのこまめな換気、適度な湿度の保持、予防接種などを心がけていただきたい 1,2)。

■参考・引用
1)千葉県健康福祉部疾病対策課:インフルエンザ注意報の発令について(令和 5 年 9 月 20 日)
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2)千葉県健康福祉部疾病対策課:インフルエンザから身を守ろう
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【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
 2023 年第 47 週の県全体の定点当たり報告数は、前週の 1.76 人から増加し、2.04人であった。
 地域別では、印旛(3.50)、香取(3.33)、市原(2.73)保健所管内で患者報告数が多かった。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年11月29日更新)