2023年08月11日
2023年 第31週
(令和5年7月31日~令和5年8月6日)
【今週の注目疾患】
■腸管出血性大腸菌感染症
2023年第31週に県内医療機関から腸管出血性大腸菌感染症の届出が4例あり、2023年の累計は67例となった。
2018年以降の過去5年間の同時期(第31週時点)と比べると、届出数は多くはないものの、例年気温が上昇する6月~8月にかけて患者届出数が多くなる傾向があるため、これからのシーズンは特に注意が必要である。
2023年に届出のあった67例のうち、性別では男性26例(39%)、女性41例(61%)と女性が多かった。
年代別では20代が15例(22%)で最も多く、次いで50代が13例(19%)、30代が9例(13%)、10代と10歳未満がそれぞれ7例(10%)と続いた。
症状の有無別では患者が45例(67%)、無症状病原体保有者が22例(33%)であり、症状が見られた患者45例のうち、発現した症状別(複数記載有り)では、腹痛が40例(89%)で最も多く、次いで水様性下痢が37例(82%)、血便が26例(58%)と続いた。
重症例の溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発したのは1例であった。
O血清群と毒素型別では、O157VT1VT2が22例(33%)で最も多く、次いでO157VT2が16例(24%)であり、O157VT2産生株(VT1VT2もしくはVT2単独)が全体の約6割を占めていた。
腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素(VT)は、その種類の違いによって重症度に違いが見られ、VT2産生株(VT1VT2もしくはVT2単独)はVT1単独産生株と比較して、有症状者の割合や血便を呈する患者の割合が高い傾向が見られる。
国立感染症研究所の報告によると、2022年に溶血性尿毒症症候群(HUS)を合併した症例58例のうち腸管出血性大腸菌が分離された31例中24例(77%)の毒素型がVT2産生株(VT1VT2もしくはVT2単独)であった1)。
腸管出血性大腸菌はわずか100個程度の少量の菌数でも感染が成立するため、人から人への経路、または人から食材・食品への経路で感染が拡大しやすい1)。
昨年県内においても腸管出血性大腸菌による集団食中毒事例が発生している2)。
発生予防のためには、食品の調理時における野菜類の十分な洗浄、肉類の十分な加熱や生肉の喫食の回避、調理器具類の洗浄、消毒等、交差汚染を防止するための基本的な衛生対策を行うこと及び患者が発生した際は、家庭内や施設内等における二次感染を防ぐため、手洗いを励行することが重要である1)。
■参考・引用
≪引用・参考≫
1)腸管出血性大腸菌感染症 2023年3月現在(国立感染症研究所)
>>詳細はこちら
2)令和4年度食中毒発生状況(千葉県)
>>詳細はこちら
【新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況】
2023年第31週の県全体の定点当たり報告数は、前週の18.36人から減少して17.92人であった。
地域別では長生(30.29)、君津(27.64)、市原(25.64)保健所管内で患者報告数が多かった。
【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年8月9日更新)