2023年05月26日

2023年 第20週
(令和5年5月15日~令和5年5月21日)

【今週の注目疾患】
■日本紅斑熱
 2012 年から 2023 年第 20 週までに、県内医療機関から 102 例の日本紅斑熱の報告があった。
過去には死亡例も報告されている 1)。
年代別では、60 代以上が全体の 9 割以上を占めた。
近年報告数が増加傾向にある。
本疾患は一定の季節性を有しており、例年 5 月以降に報告数が増加し、11 月まで報告がみられる。

 日本紅斑熱は紅斑熱群リケッチアの一種 Rickettsia japonica を起因病原体とし、病原体を持つマダニに刺咬されることにより感染する。
マダニの生息場所は山林、裏庭、あぜ道、畑等の草の上である。
臨床症状は頭痛、発熱、倦怠感を伴って発症する。
潜伏期間は 2~8 日で、発熱、発疹、刺し口が主要三徴候である。
2007 年から 2019 年までの全国の届出票の記載では、発熱 99%、発疹 94%、肝機能障害 73%、刺し口 67%、頭痛30%、播種性血管内凝固症候群(DIC)21%であった 2)。
発疹は体幹部より四肢末端部に比較的強く出現する。
日本紅斑熱をはじめリケッチア症を疑った場合には、実験室診断の結果を待たず、直ちに抗菌薬の投与が勧められる2)。
 マダニの多くは春から秋にかけて活動が活発になる。
キャンプやハイキング、農作業や草刈り等で山林や草むら等に立ち入る際には、①長袖長ズボンなど肌の露出が少ない服装、②忌避剤(防虫スプレー)の使用、③地面に直接座らずに敷物を使用、④帰宅をしたらすぐに着替え・洗濯、⑤帰宅後はすぐに入浴し、体にダニが付いていないか確認、などの対策が重要となる 3)。
 また、刺咬された場合には、無理に引き抜くとマダニの一部が皮膚に残ってしまうことがあるので、医療機関を受診して除去してもらうことが推奨される 3)4)。

■参考
1)千葉県健康福祉部疾病対策課:
【日本紅斑熱】感染症予防のための情報提供について(令和 4 年10 月 11 日発表)
>>詳細はこちら
2)国立感染症研究所:日本紅斑熱 1999~2019 年
>>詳細はこちら
3)千葉県衛生研究所:マダニ被害に遭わないために!
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4)千葉県健康福祉部疾病対策課:ダニ媒介感染症について
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■咽頭結膜熱・流行性角結膜炎
 2023 年第 20 週に県内の小児科定点医療機関から報告された咽頭結膜熱の定点当たり報告数は、定点当たり 0.55(人)であった。
また、県内の眼科定点医療機関から報告された流行性角結膜炎の定点当たり報告数は、定点当たり 0.64(人)であった。
両疾患とも、過去 5 年間の同時期(第 20 週)と比較して定点当たり報告数が多く、今後の発生動向に注意が必要である。
 アデノウイルスは、呼吸器疾患、流行性角結膜炎などの眼疾患、感染性胃腸炎などの消化器疾患を起こす。
また、出血性膀胱炎、尿道炎などの泌尿器疾患や、さらに肝炎なども起こす1)。
 国立感染症研究所の報告によると、咽頭結膜熱は、夏に流行のピークが認められ、2003年以降は冬にも明らかなピークがみられるようになった。
患者は1歳を中心とする小児からの報告数が多い。
一方、流行性角結膜炎は、例年5~8月に多いが、2015年以降は秋にも報告数の増加がみられた。
患者は0~4歳を中心とする小児と、成人では30代を中心とした幅広い年齢層にみられる1)。
 アデノウイルスは、接触感染及び飛沫感染するので、頻回の手指衛生対策等による感染対策が重要である。
家庭内での感染を防ぐために、こまめに手洗い・消毒を実施し、タオルなどは共用しないこと、ドアノブや手すり、おもちゃ等をこまめに次亜塩素酸ナトリウム等で清掃、消毒することが効果的である。
なお、通常の消毒用アルコールが無効であり、注意が必要である。
■参考
1)国立感染症研究所:アデノウイルス感染症 2008~2020 年
>>詳細はこちら

【新型コロナウイルス感染症の発生状況】
2023年20週の県全体の定点当たり報告数は、前週の3.08人から増加し3.99人であった。
県内16保健所全ての管内から報告があった。

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和5(2023)年5月24日更新)