2022年09月16日

2022年 第 36 週(2022/9/5~2022/9/11)

【今週の注目疾患】
■手足口病
警報発令継続中(警報開始基準値 5.0 終息基準値 2.0)
2022 年第 36 週手足口病定点当たり報告数 県全体 3.67 (人) 前週 3.75(人)から減少
第 27 週に警報開始基準値である定点当たり報告数 5.0(人)を上回って以降、県内では警報発令状況が続いている。
県全体では前週より減少傾向だが、7 保健所管内で増加傾向であった。

■RS ウイルス感染症
 2022 年第 36 週に県内の定点医療機関から報告された RS ウイルス感染症の定点当たりの報告数は、1.50(人)であった。
特に船橋市 3.90(人)、市川 2.50(人)、習志野 2.40(人)、松戸 2.07(人)、安房 2.00(人)保健所管内では定点当たり 2.0(人)をこえる発生状況となっており、全県的な流行が継続している。
 また、2022 年は第 36 週時点で RS ウイルスを原因病原体と推定する急性脳炎が 2 例(2/26,8%)報告されている。

 RS ウイルス感染症は RS ウイルスを病原体とする呼吸器感染症である。
RS ウイルスは世界中に広く分布しており、ほぼすべての人は幼児期に感染する。
通常 RS ウイルスに感染してから 2~8日、典型的には 4~6 日間の潜伏期間を経て発熱、鼻水などの症状が数日続く。
多くは軽症ですむが、重くなる場合には、その後咳がひどくなる、喘鳴がでる、呼吸困難となるなどの症状が出現し、場合によっては細気管支炎、肺炎へと進展する。
特に生後 6 ヶ月未満や低出生体重児、心臓や肺、神経や筋肉の疾患、免疫不全が存在する場合には重症化するといわれる。
重篤な合併症としては、無呼吸発作や急性脳症等がある。
治療は対症療法が基本であるが、重症化リスクのある小児には重症化抑制のため抗ウイルスモノクローナル抗体(パリビズマブ等)を使用する場合もある。
また、RS ウイルスは成人も再感染することがある。
慢性呼吸器疾患等の基礎疾患を有する高齢者にも重症化のリスクがあると報告されており、高齢者施設などでの集団感染には注意が必要である 1,2)。

 感染経路としては、RS ウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、又は会話をした際に飛び散るしぶきを浴びて吸い込む飛沫感染や感染している人との直接の濃厚接触、ウイルスがついている手指や物品(ドアノブ、手すり、机、いす、おもちゃ、コップ等)を触ったりなめたりすることによる間接的な接触感染で感染する。
成人の再感染では、感冒様症状又は気管支炎症状のみである場合も多く、RS ウイルス感染症であると気づかれていない年長児や成人が存在する。
従って、咳等の呼吸器症状がある年長児や成人は可能な限り、乳幼児との接触を避けることが重要である。
また、乳幼児と日常的に接触する場合、特に咳等の呼吸器症状がある場合には、マスクをして接することが重要である。
接触感染対策としては、流水・石けんによる手洗いやアルコール製剤による手指衛生の励行のほか、ウイルスが付着している可能性が高い高頻度接触物(子どもたちが日常的に触れるおもちゃ等の共用物品、ドアノブ等)のアルコールによる消毒等の実施が重要である 2)。

■参考
1)国立感染症研究所:IASR Vol. 43 RS ウイルス感染症 2018~2021
>>詳細はこちら
2)厚生労働省:RS ウイルス感染症 Q&A
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和4(2022)年9月14日更新)