2017年11月17日

今週の注目疾患   平成29年・45週(11月6日~11月12日)

【梅毒】
 2017 年第 45 週に県内医療機関から 4 例の梅毒の届出があり、2017 年の累計は 122 例となった。
梅毒の届出は、全国において 2010 年以降増加傾向が続いており、2010 年では年間 621 例であった届出が、2016 年にはその 7 倍以上の約 4500 例の届出を認めている。
2017 年はさらに届出が多く、既に 2016 年の届出数を超えている。
千葉県においても、2017 年第 45 週時点での届出数 122 例は、昨年同時期(114 例)を上回り、より一層の梅毒対策が必要である。性別では男女ともに届出数の増加が見られており、第 45 週時点の届出は男性 78 例(昨年同時期 73 例)、女性 44 例(昨年同時期 41 例)である。
年齢群別では、男性は 20 代~50 代の幅広い年齢群のピークを示し、女性は 20 代に明らかなピークを持つ。10 代では女性の届出が男性より多い。
 梅毒の届出において、先天梅毒を除いては
①カルジオリピンを抗原に用いる方法
②Treponema pallidum を抗原に用いる方法
上記①と②の両方の検査において陽性を示した症例が届出対象となっている。
また、無症状病原体保有者の届出にあたっては、②の検査法における陽性の確認と、①カルジオリピンを抗原とする抗体検査において、倍数希釈法では 16 倍以上、自動化法では概ね 16.0 R.U.、16.0 U もしくは16.0 SU/ml 以上を示した症例が届出の対象である。
検査結果における解釈の注意点として、①カルジオリピンを抗原に用いる検査では、他の感染症(HIV 等)、自己免疫疾患、免疫不全、妊娠や加齢といった要因により生物学的擬陽性となる場合があることが報告されている(②T. pallidum を抗原に用いる方法は特異度が高いものの、頻度は低いが他の感染症等による擬陽性がある)。
検査法によっては感染から極初期の患者では、①と②の検査結果が一致しないことがあり、また通常①の検査による抗体価は疾患の活動と相関するため、適切な治療により減少するが、一部には長期に陽性となる serofast reaction が報告されている。
一方で未治療の既感染者において、長期経過後に①の検査で陰性と判定されることもある。
これらは宿主因子の他、検査法の特性(測定原理等)も影響すると考えられる。
周知のとおり、感染症法における梅毒の届出基準はあくまでも「届出」の基準であり、この基準に満たない症例において梅毒感染、治療の必要性を否定するものではない。
使用した検査法の特性を考慮し(必要に応じて他の検査法や再検査を実施)、患者の既往歴や治療歴といった経過等と合わせての診断が求められる。


【千葉県感染症情報センターより参照】
(平成29年11月15日更新)